川辺に集まる野鳥たち)清流の生き物を餌に/連載 野鳥~自然を生きる知恵・与名正三…9
水中にある岩に止まるササゴイ
トビゲラをくわえて水面を飛翔するセグロセキレイ
サワガニを捕らえたカワセミ
川の中の岩に止まるヤマセミ
川の中でカニを捕らえたイソシギ
日本で生息する野鳥たちの中で水辺をすみかとする野鳥は、サギやカモなど数多くいます。しかし、同じ水辺であっても、里山の清流や山あいの渓流でなければ生きていけない野鳥たちもいます。
例えばセキレイの仲間「セグロセキレイ」や「キセキレイ」は清流にいるカワトンボやイトトンボ、トビゲラなどを捕らえ子育てを行います。巣を作る場所も、川の土手にある岩の隙間や、農家の屋根の隙間などです。中には使用していない農機具の隙間に営巣するものもいます。繁殖期里山の小川では、たくさんのトビゲラをくわえ、水面を飛び回るセグロセキレイの姿を見かけることが多くなってきます。
また清流でなければ姿を見ることのできない野鳥もいます。オレンジとコバルトブルーの美しい色彩から、渓流の宝石とも呼ばれる「カワセミ」です。小魚を主食としテナガエビやサワガニなども捕らえるため、清流でなければ暮らせないのです。しかしカワセミは、近年大きな河川や公園の中にある池などの浄化が進み、都会でも頻繁に見られるようになってきました。
それに対してヒヨドリくらいの大きさの「ヤマセミ」は、アユやイワナなど大きな魚を主食にしています。深い滝つぼなどのある渓流でなければ、水中に飛びこんで魚を捕食できないのです。
カワセミやヤマセミは水中にダイビングして直接魚を捕らえますが、清流で暮らす野鳥の中には河岸や岩場を歩きながら獲物を探すものもいます。シギの仲間「イソシギ」は河川の河口から上流まで幅広く生息しています。河口では昆虫や小魚、上流ではサワガニやテナガエビなど移動しながら捕らえています。
またあまり移動することなく、ただひたすら獲物がやってくるのを待っている野鳥もいます。サギの仲間「ササゴイ」です。ササゴイは河川の中流部から上流部にある堰(せき)や梁場(やなば)の縁などに止まり、遡上(そじょう)する魚が飛び跳ねた瞬間をキャッチします。
このように、いくつかの野鳥を例に上げ、川辺の野鳥たちを紹介しましたが、これ以外にも川辺を利用する野鳥はたくさんいます。例えば夏場、カラスやスズメ、ヒヨドリなどは川の浅瀬にやってきて、水を飲んだり水浴を楽しんだりしています。
生き物が多く、餌の種類も豊富でたくさんの野鳥が集まる川辺。集中豪雨などで常に状況が変化する環境ですが、生物多様性の観点からも人の手によって日々管理保全されることが大切ではないでしょうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、月1回更新予定)