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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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体色の個体差)猛禽2種は色彩多様、研究進み判明/連載 野鳥~自然を生きる知恵・与名正三…10

淡色型のサシバ。体色は全体に淡い茶褐色

淡色型のサシバ。体色は全体に淡い茶褐色

標準型のサシバ。体色は茶褐色

標準型のサシバ。体色は茶褐色

暗色型のサシバ。体色は黒褐色

暗色型のサシバ。体色は黒褐色

標準型のハチクマ。体色は茶褐色

標準型のハチクマ。体色は茶褐色

淡色型のハチクマ

淡色型のハチクマ

暗色型のハチクマ

暗色型のハチクマ

 私たち人間も人種によってさまざまな肌の色をしていますが、日本で観察される野鳥約670種類の中にも、同じ種類なのに個体の体色がさまざまで、図鑑では年齢や性別の解説が難しい野鳥が2種類だけ存在します。どちらもタカの仲間で、一つは「サシバ」です。

 サシバは秋から冬にかけて、奄美、沖縄、台湾のほか、フィリピンなどの東南アジアなどで過ごします。春4月上旬、日本の里山や低山にやって来て、ヘビやトカゲなどを捕らえ子育てを行います。

 過去の図鑑や文献では、メスはハシブトガラスくらいの大きさで、頭部から背面にかけては茶褐色。顔面の眉斑は大きく、胸は隙間の多い茶色の斑があるとされています。またオスはやや小さくハシボソガラスくらいの大きさで、頭部は灰色。背面は茶褐色で、顔面の眉斑は小さく、胸は隙間のない茶色の斑があるとされてきました。

 しかし、最近の研究で、サシバはさまざまな体色の個体が存在し、簡単な解説では説明できないことがわかってきました。例えばからだの大きさは、メスの中にも小さな個体が存在し、オスと同じハシボソガラスくらいの個体もいるということ。また眉斑の大きさはあくまで個体差であって、性別とは関係ないこと。そして体色については、全体に淡い茶褐色の個体から黒褐色の個体まで実にさまざまな色彩のサシバがいることなどが新たにわかってきました。

 また年齢は、巣立ちから1年目までの幼鳥は胸の斑が縦斑のため判別できますが、その後の年齢は不明な部分が多いようです。

 もう一つ、体色の個体差が大きく識別が難しい猛禽(もうきん)は「ハチクマ」です。ハチクマはサシバ同様、東南アジアで冬を越しますが、日本に渡来するのは初夏5月10日ごろです。大きさはハシブトガラスの1.5倍くらい。主に里山近くの低山で、ヘビやトカゲ、ネズミなどを獲物として生活します。また7月以後はハチの巣を採取し、ハチの幼虫をヒナに与えます。標準的な体色は茶褐色ですが、個体差が大きく、淡色型、標準型、暗色型などに分かれます。

 このように同じ種でさまざまな個体が発生する原因は諸説ありますが、捕食する獲物の種類と関係があるのではないかと考えられています。私たち人類も、人種によって白色人種や黄色人種、黒色人種などさまざまです。世界中の生き物の中では、お互いに限られた数少ない存在ではないでしょうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、月1回更新予定)