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第1回「奈良の声」読者会の報告

浅野善一

民博資料の保存方針検討委、会議の非公開見直し その都度判断 奈良県、議会での意見受け

奈良県立民俗博物館が収集した民俗資料の保存の在り方について意見を聞く検討委員会の第4回会議=2025年10月24日、同県大和郡山市の同博物館、浅野善一撮影

奈良県立民俗博物館が収集した民俗資料の保存の在り方について意見を聞く検討委員会の第4回会議=2025年10月24日、同県大和郡山市の同博物館、浅野善一撮影

 奈良県立民俗博物館が収集した民俗資料の保存の在り方について意見を聞く、県の民俗資料収集・保存方針等検討委員会の運営を巡っては、会議は非公開、作成・公開される議事録は発言者名を伏せた議事概要のみという形で実施されてきたが、県議会での意見を受けて一定の見直しが行われることになった。会議の公開、非公開は議事内容に応じその都度、判断する。議事録には発言者名を明記する。ただ、会議はすでに4回開かれており、議論は最終段階に入っている。

 検討委員会の会議が非公開となっていることについては、県議会で繰り返し取り上げられてきた。会議の公開などを求める議員の意見に対し、山下真知事は「活発な意見交換ができる環境が阻害される恐れがある」などとしてきた。

 しかし、今年9月の県議会定例会文教くらし委員会では、こうした議員の意見を受けて、検討委員会の委員を対象にアンケートを実施したことを明らかにした。県は結果について「会議のすべてを公開すべきという意見もある一方で、会議の内容により非公開とすべきという意見もあった」と説明、今後の会議の公開、非公開はこの結果を踏まえ検討委員会で検討されるとしていた。

 運営の見直しは、10月16日の県議会決算審査特別委員会で金山成樹委員(自由民主党・無所属の会)の質問を受けて明らかにされた。答弁した県文化財課長は会議の公開、非公開について「委員長(日高真吾・国立民族学博物館教授)は(アンケートで)意見が分かれた結果を受けて、議事内容に応じてその都度、判断すると決定をされた」と述べた。

 この後、10月24日に大和郡山市の県立民俗博物館で開かれた検討委員会の第4回会議には見直しは反映されなかった。「公開することで自由闊達(かったつ)な意見交換ができなくなり、会議の公正円滑な運営ができなくなる恐れがある」との判断だった。一方、議事録は発言者名を明記し、詳しくしたものが公開されることになっている。

 このほど県ホームページで公開された第3回会議(今年6月11日開催)の議事録にも発言者名が明記された。会議で出た主な意見が委員名を添えて箇条書きで紹介されている。

 検討委員会は、同館がこれまでに収集した約4万5000点に及ぶ民俗資料について、同館内外の保管場所の老朽化により保管環境の劣悪化が進んでいることを受け、県が設置。民俗資料の収集・保存方針と除籍マニュアル(手順規定)の策定に向け、意見を聞いてる。委員は日高委員長ら有識者5人。

 県は会議の非公開については「検討委員会で決定した」としているが、検討委員会の設置当初に委員会に対し「非公開が妥当」との考え方を示している。

 日高委員長は第4回会議終了後の記者会見で、会議の公開、非公開や議事録の在り方について当初の形を見直すに当たって、どのような経緯、判断があったか、記者の質問を受けて答えた。

 日高委員長は「(民俗資料)廃棄ありきの方針決定ではなくて、本当にこの博物館がしっかりと再生していくためのルール作りをしているという、委員側と県側の信頼関係が(第2、3回の会議を経て)できた。そのときに議論を知りたいという声が議会の議員の先生からも届けられているということをお聞きした。関心を持ってもらえることは非常にうれしかった。どういう形で応えられるのか、公開も一つの選択(肢)。議事録もお示しできる部分はお示しできたらということで、委員の皆さんとも相談、その方向性でいきましょうとなった」と述べた。

 一方、今回の会議を非公開とした理由については「かなり厳しいやりとりというか、私たち(委員側)も言いたいことを言うし、県側も言いたいことを言ってもらう。これは非常に大事なことだった。ただ、皆さんに見られていると、みんなそっち側を気にした形で、どうしても発言が萎縮してしまうということを一番懸念した」と説明した。

 県文化財課長は同記者会見で、今後の会議の予定について、本年度内に開く第5回会議で収集・保存方針と除籍マニュアルの案が固まれば、その後、検討委員会として県に提示してもらう流れになるとした。一方、日高委員長は同会議の公開については明言を避けた。

 第3回会議の議事録のURLは https://www.pref.nara.jp/secure/328397/dai3kai_gijiroku.pdf

筆者情報

奈良県民俗資料保存検討委の非公開「委員会で決定」 知事、当初の説明変えず 県が非公開の原案示したこと明らかになるも

奈良県議会=奈良市登大路町、浅野善一撮影

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