奈良県橿原文化会館の存続求める署名5万2000人に 「南部の芸術文化の拠点残して」 吹奏楽、合唱、観劇の団体が知事に要望書

奈良県橿原文化会館の存続を求める要望書と署名簿を提出する福島秀行会長(右から2人目)=2025年11月6日、奈良県庁、浅野善一撮影
山下真奈良県知事が県橿原文化会館(橿原市)の閉館・解体方針を示していることに対し、県内の吹奏楽や合唱の関係者らでつくる「橿原文化会館存続を求める会」(福島秀行会長)は11月6日、同館の存続を求める約3万5000人分の署名と要望書を知事に宛てて提出した。要望書は同館閉館について「県全体の文化環境を貧困化させ、県内における文化の南北格差を拡大する」と訴えている。奈良演劇鑑賞会(宮崎きよ子代表)も同席し別に7000人分の署名を提出した。演劇鑑賞会が今年2月に提出済みの分を合わせると署名の総数は約5万2000人となった。
同館を巡っては、建設から40年以上が経過し、山下知事は昨年1月の定例会見で「橿原文化会館の機能を保持するための必要最小限の改修をした場合、約22億円かかり、建て替えはしない」として、閉館の方針を打ち出した。
これに対し、福島会長が理事長を務める県吹奏楽連盟が主体となって今年4月、「存続を求める会」を設立。橿原市合唱協会なども賛同団体として加わり、ポスターやちらしで活動をPRするとともに署名活動を展開、今年7月6日には同館で決起集会も開いた。
要望書によると、同館は県中南部の音楽文化、芸術活動の拠点として、クラシックコンサートや吹奏楽コンクールのほか、学校吹奏楽部や市民楽団の定期演奏会、市民の合唱グループの発表の場などに利用されてきた。
同館の大ホールは生演奏の鑑賞に堪える音響性能を備えているといい、客席数も1300席と県内最大規模。それでも吹奏楽コンクールなどの大きな行事では、客を収容しきれないこともあるといい、要望書は、同館のような規模のホールを県内からなくしてしまうことに懸念を示している。改修中の県文化会館(奈良市)はこれまでの1313席から1100席に減ってしまう。
一方、奈良演劇鑑賞会は東京などからプロの劇団を招き観劇会を開いていて、同館を会場として利用してきた。
この日は、福島会長らが県庁を訪れ、中村美也子・県地域創造部次長に要望書と署名簿を提出した。署名数の内訳は「存続を求める会」が3万5027人分、演劇鑑賞会が7092人分。演劇鑑賞会は今年2月に提出した9782人分を合わせると1万6874人になる。中村次長は「思いを受け止めて、知事に伝えたい」と応じた。
要望書提出後の会見で福島会長は「橿原文化会館は県文化会館の半分ぐらいの安い利用料で使え、駅からも近い。県民、市民の皆さんに使いやすく親しまれるホール、アマチュア文化の中心として役割分担したらいいのではないか」と述べた。
橿原市合唱協会の門内一子会長は「ある合唱団の平均年齢は87.5歳。1年に1回(橿原文化会館で開かれる)合唱祭の舞台に立つことを生きていく励みにしている。一人一人の署名が知事さんに届けば」と述べた。
奈良演劇鑑賞会の久保博文事務局長は「(県のホールでは)橿原文化会館は県南部の人たちにとって唯一の文化芸術の発信の地。これからの若い人たちが文化芸術に触れる場所がなくなる。改修すれば何十年も使えるので改修してほしい」と述べた。
筆者情報
- 浅野善一
- 電話 090-7767-8403
- メール asano-zenichi@voiceofnara.jp
- ツイッター @asano_zenichi








