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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

奈良県)奈良市控訴せず 生活保護・通院交通費の遡及支給命じる判決

 生活保護の通院交通費を巡り、奈良市が周知を怠ったために支給を受けられなかったとして、市内の男性が市に対し、過去にさかのぼって支給を申請し却下された問題に関し、この男性が市を相手取り、却下処分の取り消しなどを求めた訴訟で、奈良地裁が市に過去5年分の交通費10万5790円の支給を決定するよう命じた判決について、市は控訴を見送った。

 市保護課の芳村篤史課長補佐は9日、「奈良の声」の取材に対し、控訴を見送った理由について、市の主張が次の点で認められたためとした。交通費支給の遡及期間の判断について、判決は「市の裁量に委ねられている」とした。市職員(ケースワーカー)が男性に対し、交通費支給の可能性を積極的に教示しなかったことについて、判決は「直ちに違法となるような法的根拠は見いだせない」とした。

 また、過去5年分の交通費支給は、市が却下処分の理由とした厚労省の「2カ月のみ遡及可能」との見解に反するが、「市が通院交通費を文書で周知するまでの間に、遡及支給の申請があったのはこの件だけで、今後に影響しない」とした。加えて、原告の男性は高齢で病気療養中であり、控訴すれば負担が掛かることも考慮したと述べた。

支給交通費、財源は全額市費

 生活保護は国に実施責任があり、事務は都道府県や市などが設置する福祉事務所が行う。費用の負担割合は国が4分の3、福祉事務所を設置している都道府県や市などが4分の1と決まっているが、男性に支給する過去5年分の交通費の財源は全額市費とする。芳村課長補佐は「判決が支出の根拠となる」とした。

 男性は橋本重之さん(83)。この問題では、市は交通費支給を求める橋本さんに対し、5年前にさかのぼって支給する、といったん通知していた。判決は、通知に反する却下処分は禁反言の法理の適用により、市の裁量を逸脱して違法とした。【続報へ】

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