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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

くじ引き落札だった 奈良県、県域水道一体化の試算業務委託の入札 市町村に浄水場廃止を促すプランに向け

県のプランで廃止浄水場の一つに目される大和郡山市営昭和浄水場=2019年11月7日、大和郡山市額田部北町

県のプランで廃止浄水場の一つと目される大和郡山市営昭和浄水場=2019年11月7日、大和郡山市額田部北町


【視点】奈良県の大半の市町村の上水道事情や水道料金のあり方に影響を及ぼす県域水道一体化。これの実施に向けた県の試算業務委託の落札者が、単純なくじ引きで決まっていたことが分かった。県民の生活を変更しかねない重要な公務の委託が、くじ引きという、駄菓子屋の店先の出来事のようではいかにも軽い。

 生駒市、大和郡山市、天理市の浄水場や地下水などの自己水源を廃止し、県内平野部28市町村の水道事業を、大滝ダムを主水源とする県営水道に吸収合併する県のプランにまつわる委託業務。「県上水道エリアにおけるアセットマネジメントおよび水道料金シミュレーション」の名称で2016年11月、一般競争入札を実施し、建設コンサルタント4社が応札した。うち3社が最低制限価格2742万円を提示したため、くじ引きとなった。

 最低制限価格は、不祥事の防止を期して事前に公表されるため、くじ引きの落札は珍しくない。これを抑制するため県土マネジメント部は、予定価格3000万円以上の土木工事、予定価格1000万円以上の建設コンサルタント業務の入札は原則、総合評価方式を採用するよう指導してきた。

 今回の入札は予定価格が3000万円を超え、委託業務としては大型の発注に当たる。一方、入札を執行した県地域政策課(当時)は「業者間の技術力の差は生じにくい委託内容である」として、総合評価方式やプロポーザル方式の採用を見送っていた。

 くじ引きで契約者を決める方法は、プロ野球のドラフト会議のように箱が用意され、落札者に該当するの表示が入った封筒を引くと受注業者になる。県の部署によっては、より精緻な仕組みの電子抽選に移行したという。

県域一体化に伴うデメリットの試算なし

 ダムの水を上水道に引くと、冬は冷たく、夏は生ぬるい。地下水を水源としてきた自治体が「うちの水はおいしい」と太鼓判を押した水道水が失われようしている。多様な水源を残しておいた方が、災害に強いとの考え方もある。

 落札した業者が作成した試算結果はA4判文書約600枚。これをもとに県水道局は市町村向けの資料を作成し、“事業統合すれば約800億円の得”と広報紙などでアピールしてきた。しかし肝心の水道料金はどうなるのか、説明が遅れている。

 県域水道一体化に向けた県の資料は、市内全給水量の約半分を地下水の自己水で賄う大和郡山市にも何度か送られてきた。先の同市議会3月定例会では具体的なスケジュールが議員に手渡され、来年3月には県域一体化に向けた覚え書きを締結し、10年後に事業統合する図式が描かれている。奈良県内は、神奈川や石川などと並び、全国の中でも水道施設の償却累計額が高く、老朽化が進んでいると警告する。

 一方、地下水などの市町村の自己水源を一気に廃止することのデメリットには触れていない。リスクはまったくないのか。コンサルタント業者への発注に際し、仕様書には一体化に伴うデメリット試算は盛り込まなかった。

 県が現在、県域水道一体化を強力に推し進めることができるのは、県営水道の主水源である大滝ダムが2013年に完成したことによる。しかし、市町村向けのこれらの資料には、そうした記述はなく、ダム建設により大きな犠牲を被った現地の奈良県川上村のことは何も書いていない。水没などに伴う財産上の補償は国が行ったが、地域社会の分断という、防災の要とされる住民相互の絆に亀裂を走らせたダムの負の面の存在は、県の都市部ではほとんど知られていない。

 水道一体化の号令を受け止め、すでに橿原市や王寺町、川西町などは自己水源を廃止した。100%県営水道に切り替える市町村が相次いでいる。

 王寺町をはじめ、同町周辺の北葛城郡、生駒郡の町村はかつて、住民発議による合併に向けた法定署名が集まっていたが、議会と首長が後ろ向きだった。財政が悪化し、県から水需要の減少や維持管理費用の増大への懸念を突きつけられても、小さな町村は抗弁が難しいだろう。

 対照的に、新庄町と当麻町が合併してできた葛城市は現在、江戸期に築造された農業用のため池を浄水場に接続し、県営水道も受け入れながら、県内で一番水道料金の安い自治体になるに至った。

 これからの水道広域化はいろいろな連携が模索できる。しかし、県のそれは熟議がないまま県民不在の形で進んでいく。

 県水道局業務課は「くじ引きで落札した業者に対しては、入札条件を具備しているか厳正に審査し契約した」と話している。

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