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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

視点)京都府立洛南病院の医療観察法病棟計画で地元精神病患者会が交渉 収容者に外部者と触れ合う機会を

 京都府立洛南病院(宇治市五ケ庄広岡谷)が、刑事責任を問えない精神障害者を収容する医療観察法病棟(17床)の約2年後の開設を計画していることに対し、京都市伏見区の精神病患者会「前進友の会」が、中止を求めて病院と交渉を続けている。交渉は平行線をたどりながらも、病院側はこれまでに、病棟の開設後、入院患者と外部の有志が触れ合う何らかの機会を設けることに前向きな姿勢を示した。

 患者会は昨年8月、運営する「やすらぎの里共同作業所」(市野裕一所長)と連名で同病院に公開質問状を提出。心の調子を乱して事件に及び不起訴や無罪になった人たちを一手に収容する病棟は、退院した当事者に「観察法病棟帰り」などの烙印(らくいん)を押すもので、社会復帰を難しくするなどとして、回答を求めた。病院は交渉に応じ、患者会側は5人がこれに臨んでいる。

 医療観察法病棟を巡っては、法律が成立した2003年、近畿で初めて奈良県大和郡山市内に計画(開棟2010年)されたとき、約2万8000人の反対署名が集まったが、「通り魔専用病棟」という誤った受け止め方がされていた。計画中止を求める患者会の視点は、これとは百八十度異なる。

 「とても複雑な心境だ」と患者会のメンバーの1人は漏らす。洛南病院には、精神障害者の解放を目指して共に活動した医師がおり、現在は要職に就いている。病室の外側から鍵を掛けないなどの開放処遇や地域との連携で同病院は注目されたこともある。このメンバーは、そうした実績とは方向が異なる計画に違和感を抱く。医療観察法の閉鎖病棟は、内省を深めなければ退院させない法務省・厚生労働省共管のプログラムも背景にあり、全国的に入院日数が長期化している。

 法施行から丸15年。この間、法案段階で反対していた福祉や医療の専門職らが担い手として制度をけん引している事例は各地で見られる。法案に反対した民主党が政権を奪取してからも、医療観察法の専用病棟は増え続けた。

 交渉はこれまでに2度、昨年10月21日と本年2月17日に行われた。計3時間にわたる交渉では、大阪府立精神医療センター(枚方市宮之阪)の医療観察法病棟において、府内の人権団体が定期的に訪問していることを患者会は例に出し、開設には反対だが、できる以上は洛南病院もそうした機会を設けてほしいと要望し、病院側から前向きな回答を引き出した。

 昨年、洛南病院で起きた看護師による患者への暴行、虚偽報告事件についてのやり取りもあった。患者会が質問した通電療法の年間実施件数については、病院側が口頭で開示した。

 また、山下俊幸院長は、医療観察法の処遇を地裁が決める上で、釈放か収容かの分かれ目となる精神鑑定の在り方に関し、鑑定にとどまらず医師らが回復可能な治療を試みることで、不処遇(釈放)になるケースがあることについて、「一定の意義は認識している」との見解を示した。約2カ月の精神鑑定期間中は通常、鑑定に集中するため、精神科の治療は最小限度のものになるといわれている。

 交渉の場をコーディネートした患者会の江端一起さん(59)は、洛南病院に通院した経験がある。かつては患者たちとディスコパーティーを開くなど、職員の熱意が話題になったが、医療観察法の施行により潮目が変わったともいわれる。当時の岡江晃院長(「宅間守精神鑑定書―精神医療と刑事司法のはざまで」著者、故人)は同法専用病棟を希求し、滋賀県の同病棟開設に協力した。

 患者会は交渉を「団体交渉」と呼び、「私たちの団交は積み残した課題があり、次回は夏の終わりか秋ごろでもよいので、引き続き病院側と交渉する機会を持ちたいです」と江端さんは話す。

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