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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

大和郡山市 缶・瓶リサイクル作業委託業者の器材費用負担、廃止 契約書との整合性なく 「奈良の声」が指摘

大和郡山市の家庭ごみの処理業務を担当する市クリーンセンター清掃センター=2021年8月5日、同市九条町

大和郡山市の家庭ごみの処理業務を担当する市クリーンセンター清掃センター=2021年8月5日、同市九条町"

 奈良県大和郡山市は、家庭から排出された缶・瓶のリサイクル作業を委託している業者に支払っている委託料のうち、「リサイクル機器損料」をこの2021年度から廃止した。「器材は委託業者の負担」と定めた委託契約書との整合性がない、と「奈良の声」が指摘していた。市が「奈良の声」に対し開示した同年度の契約関係書類から判明した。

 契約関係書類は、市情報公開条例に基づいて開示請求した。

年間136万円、2009年度から

 同業務は1981年度から、随意契約で大和郡山市環境事業協同組合(野村安忠理事長)に委託されている。

 市が同組合に委託している業務は、市内の家庭ごみの収集運搬業務のうち、不燃ごみ・粗大ごみの収集運搬と、一部地域の可燃ごみの収集運搬、不燃ごみのうちの缶・瓶のリサイクル作業。リサイクル作業では缶・瓶を選別し、資源業者に売却する。

 委託料は組合が提出する見積書に基づいて決定される。リサイクル機器損料の廃止は、市が開示した2021年度の見積書から判明した。

 見積書には、可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみそれぞれの収集運搬業務の1トン当たりの単価と見積額のほか、リサイクル作業の1トン当たりの単価と見積額が示されている。市が昨年開示した2020年度の見積書には、このほか年間136万円のリサイクル機器損料があったが、2021年度の見積書にはなかった。

 市クリーンセンター清掃センターによると、リサイクル機器損料はリサイクル作業で使用する組合保有の缶の圧縮施設の償却費・維持修理費という。一方、委託契約書の「使用器材の負担等」を定めた条項は「組合が、本受託業務実施にあたり必要とする器材のすべては組合の負担とする」と記している。

 同損料は2009年度から支払われており、契約書との矛盾は「奈良の声」が2020年5月に取材で指摘するまで12年間、見過ごされてきた。(2020年9月3日既報)

 契約書との整合性を図る方法としては、これまでの同損料の支払い実績に合わせて、契約書の方を改める選択肢もあったが、清掃センター長によると、委託業者の器材の費用を市が負担するのは適当でないと判断したという。

 同損料と契約書の矛盾について「奈良の声」が指摘した際、清掃センターは、損料の支払いが始まったときに、条項を精査せず、それまでの契約書をそのまま使ったのではとの見方を示していた。ただ、損料の金額の根拠については「当初は何かあったと思うが、文書の保存年限が過ぎ、書類が残っていない」として、たどれない状況になっていた。

売却益との相殺やめ、リサイクル作業委託料869万円増額

 市と同組合との契約を巡っては、組合が受け取った缶・瓶の売却益の扱いについても、委託料と相殺するこれまでの方式が不明朗さを指摘されていた。このため、2021年度から市に入金してもらう形に改められた。これに伴う委託料の減額分を補うため、作業単価が引き上げられたことも、開示された契約関係書類から分かった。

 2021年度の見積書によると、相殺をやめたことに伴い、「リサイクル作業」の単価が見直された。1トン当たり9760円引き上げられ、同年度のリサイクル作業分の委託料は3710万円。前年度に比べ869万円の増額となった。清掃センターによると、2019年度、2020年度の缶・瓶の売却実績を勘案した金額という。

 一方、組合が市に納入する売却益については、実際の売却額ではなく、業界紙に掲載される市場相場価格を基準として算出した金額とすることとし、これを契約書に明記した。業者間の不適切な売買を防止するためという。

 2020年度の組合への委託料は1億5569万円だった。2021年度は、リサイクル機器損料の廃止による減額があった一方、売却益と委託料の相殺をやめたことに伴う増額で、全体としては増額の1億6982万円となった。

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