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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県域水道一体化 企業団議会の市町村定数配分、検討始まる

記者に開示された奈良県水道広域企業団議会の在り方論議資料。定数のたたき台案は不開示だった

記者に開示された奈良県水道広域企業団議会の在り方論議資料。定数のたたき台案は不開示だった

 奈良県と26市町村で2025年度の事業開始を目指す広域水道企業団(一部事務組合)は、特別地方公共団体として意思決定機関の議会を設置する。人口の大小が著しい県内構成団体の議員定数配分などの検討が始まった。定数配分は、市町村住民の意向がどう反映されるのかにも関わる。

 県広域水道企業団設立準備協議会の意思決定プロセス等検討部会(10市町村長と土屋直毅副知事で構成)は2022年10月から11月にかけて開いた会議で、企業団議会の在り方について具体的な検討を始めた。

 記者は県情報公開条例に基づいて2022年11月13日付で県に会議資料を開示請求したが、県は開示期限を21日間示延長し、同年12月16日付で一部を開示した。関係市町村と協議中の議員定数配分のたたき台案は不開示だった。

 不開示の理由として県水道局県域水道一体化準備室は「率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがある」などとした。

 企業団設立に向け、地方自治法に基づく法定協議会設置の可否を問う議決は、県と26市町村の今年3月の議会定例会で行われる。県の方針では、議会定数の整理は2023年度中に進める。その後、議会の定数や定数配分などを盛り込んだ企業団規約案を策定し、2024年度の各議会に諮る。

 他県の水道広域企業団の前例を参考にすると、総務大臣の許可によって奈良県の水道広域企業団が成立するのは2024年秋と見られる。

 意思決定プロセス等検討部会の会議資料によると、給水人口93万4655人(2022年4月現在)の香川県広域水道企業団(県と16市町村で構成)の議員数は27人。議員1人当たりの給水人口は3万4617人。奈良県は同企業団を水道広域化の先行事例として注目してきた。

 一方、一体化の協議から離脱し、単独経営の継続を選択した葛城市を例に取ると、人口3万7800人に対し、市議会の定数は15人。香川県の企業団と比べ、議員1人当たりの人口では約15倍の公選議員が水道の審議に当たることができる。

 同様に離脱した奈良市が2022年に開いた奈良市県域水道一体化取組事業懇談会では、香川県の企業団について関係市町村の議員から聞き取りをした委員(奈良市議)から「市町村営のときと比べ、市町村議員の関係が格段に薄れる」などの懸念が示されたていた。

 2022年11月9日の生駒市議会都市建設委員会。委員から「一体化のデメリットは何か」と質問があった。市上下水道部の岸田靖司部長は「一番大きな変化は生駒市議会で水道に関する条例を審査してきたが、市民の感覚から距離感が遠くなる。市民の意向、考えを届けにくくなることは否めない。小回りの利かせ方、臨機の動きはある種、制限される。例えば、コロナウイルスの流行で減免を独自にやってきたが、規模が大きくなれば、全体の意思統一、合意形成に時間がかかる」と答弁した。

 大和郡山市の上田清市長は2022年12月5日、一体化参加への意欲を表明した記者会見での報道資料で「単独経営は市に決定がある」とする一方、「一体化は企業団に決定権があるが、本市選出議員を通じて意向は、反映される」との見方を示した。

企業長は知事に内定

 企業長には知事が就くことが内定している。今年4月の任期満了に伴う知事選の当選者が就任する。

 企業長を知事に推薦したのは意思決定プロセス等検討部会。「より多くの県民の意見を反映する観点から、行政規模の最も大きい団体の長」というたたき台案が、2022年11月29日の同協議会で了承された。 関連記事へ

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