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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

【詳報】奈良県香芝市議への出席停止処分「違法」 地裁判決、市に損害賠償命じる

判決後、記者会見に臨む青木恒子香芝市議会議員(中央)=2024年1月16日、奈良市

判決後、記者会見に臨む青木恒子香芝市議会議員(中央)=2024年1月16日、奈良市

 奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産)が議会常任委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への同行の是非を巡って議長に反論したことを発端として、議会から出席停止処分を受けた問題で、同議員が市を相手取り、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが1月16日、奈良地裁であり、寺本佳子裁判長は「処分は裁量権の範囲を逸脱し違法」として、市に対し慰謝料など33万円の支払いをを命じた。

 判決などによると、問題の経緯は次のようなものだった。

 議会が問題にしたのは、2021年12月の市議会福祉教育委員会での青木議員の川田裕議長に対する発言。青木議員は、市の保険料収納課長が「国民健康保険料の納付が困難になった市民が市の窓口に相談に来る」と答弁をしたのを受けて、「私も困った市民の方と一緒に窓口にも行かせていただいた」と述べた。

 この後、川田議長が自身の質疑の際、青木議員のことを名指しはしなかったが、「議員が国民健康保険料や生活保護の窓口に同行することは禁止すると、以前、議会で決めた。根拠となるのが香芝市政治倫理条例」「理事者のほうも、もし来た場合にはお断りをする。それでも帰らない場合は議会に報告をいただきたい」と発言した。

 青木議員はこれを自身の発言を捉えたもの受け止め、「政治倫理条例の何条に入っているのか」「議員に対する圧力と感じた。パワハラのように聞こえた」と抗議した。

 この青木議員の発言を「川田議長に対する侮辱、名誉棄損に当たる」と問題視した議員が懲罰動議書を議会に提出した。

 議会は2022年2月、公開の議場における陳謝の処分を賛成多数で可決したが、青木議員は命じられた陳謝文の朗読を拒否。これを受け、議会はあらためて陳謝の処分を議決したが、青木議員はこれも拒否した。こうしたことが繰り返され、同年12月の6回目の懲罰動議に対しては、処分をより重い出席停止4日間にして議決した。これにより青木議員は12月定例会での一般質問ができなくなった。

 判決理由で寺本裁判長は、こうした議会の対応について次のように指摘した。

 1回目の陳謝処分について、懲罰動議書では青木議員の発言を懲罰理由としたが、議会が青木議員に朗読を命じた陳謝文には、懲罰動議の審議のために議員が多大な時間を割いたことに対する謝罪などが含まれていた。

 寺本裁判長は、同市議会会議規則などに照らして、懲罰を議決する際の懲罰理由は、懲罰動議書に記された懲罰理由に限定されるとし、この1回目の陳謝処分について裁量権を逸脱、またはこれを乱用するもので違法とした。

 2回目以降の陳謝処分についても、同様に懲罰動議書に記された懲罰理由以外の内容が含まれているとし、違法な5回目の陳謝処分に対する陳謝拒否を理由に、より重い出席停止処分を科したことは裁量権を逸脱、またはこれを乱用するもので違法とした。

 一方、香芝市は「地方議会における陳謝の懲罰は、内部自律の問題として自治的措置に任せ、司法権を行使しないとするのが確立した判例。従って裁判所は陳謝の懲罰が違法、不当であると判断することはできない」などと主張していた。

 この日の判決に至るまでには次のようなこともあった。

 青木議員が提訴したのは2022年8月、5回目の懲罰動議書が提出され、市議会懲罰特別委員会が出席停止8日間の懲罰の提案を決めたとき。青木議員は提訴と同時に出席停止処分の仮差し止めも申し立てた。地裁は申し立てを認め、議会に対し同処分を行わないよう命じた。議会は処分内容を陳謝に変更して議決した。

 出席停止4日間の処分に至る6回目の懲罰動議書提出の際も、議会が処分を行わないよう仮差し止めを申し立てた。しかし、議会が議決当日に処分の内容を決めるという手法を取ったため、地裁は申し立てを却下、「出席停止処分を科すとすれば裁量権乱用の疑いが強い」と警告するにとどまった。議会は警告には従わなかった。

 弁護団は判決後の記者会見で「出席停止処分の前提となる場合に限定されるが、司法審査の対象とされていなかった陳謝処分について適法性の要件を示し、5回すべての陳謝処分の違法性を認めたのは画期的」と判決を評価した。

 また、青木議員は「この闘いは2年1カ月にわたり、勝利できたことはすごくうれしい。たくさんの支援者の方の応援もいただいた。議会の中は自由な発言ができるべきで闘っていくしかない。福祉に力を入れたいと思っているが、生活保護申請時の議員同行を認めないということに対し、質問したことが侮辱に当たるとされ、納得いかないことが続いてきた」と振り返った。

 福岡憲宏市長は判決を受けて次のコメントを発表した。「被告は香芝市でございますが、内容は市議会にかかることのため、コメントは差し控えさせていただきます」 関連記事へ

青木議員への懲罰を巡る問題の経過

2021年12月14日 福祉教育委で川田議長が「国民健康保険料や生活保護の窓口への議員の同行は禁止。断っても帰らない場合は議会に報告を」と述べたことに対し、青木議員が「議員に対する圧力と感じた」と発言。

2021年12月16日 青木議員の発言を議長への侮辱に当たるなどと問題視した議員が懲罰動議を提出。

2022年2月28日 3月定例会初日。陳謝の懲罰可決。青木議員は陳謝を拒否。

2022年3月2日 陳謝拒否に対し2回目の懲罰動議提出。

2022年3月24日 3月定例会最終日。陳謝の懲罰可決。青木議員は陳謝を拒否。3回目の懲罰動議提出。

2022年6月6日 6月定例会初日。陳謝の懲罰可決。青木議員は陳謝を拒否。

2022年6月8日 4回目の懲罰動議提出。

2022年6月23日 6月定例会最終日。陳謝の懲罰可決。青木議員は陳謝を拒否。5回目の懲罰動議提出。

2022年8月18日 懲罰特別委は処分を出席停止8日間と決定。

2022年8月24日 青木議員は奈良地裁に対し、議会が出席停止処分を行わないよう、仮の差し止めを求めて申し立て。

2022年9月1日 地裁は「裁量権の乱用と認められる」として仮の差し止めを決定。

2022年9月5日 9月定例会初日。予定していた出席停止の懲罰の採決を見送る。

2022年9月29日 9月定例会最終日。懲罰の内容を出席停止より軽い陳謝に変更し、可決。青木議員は陳謝を拒否。6回目の懲罰動議提出。

2022年11月1日 市庁舎管理規則が一部改正され、庁舎内での禁止行為に「政治的問題に関する演説行為」が加えられる。同日公布。

2022年11月7日 青木議員は6回目の懲罰動議提出を受け、奈良地裁に対し、議会が陳謝または出席停止の処分を行わないよう、仮の差し止めを求めて申し立て。

2022年11月16日 議会開会中の応接室使用自粛を求める通知。

2022年11月30日 地裁は青木議員の申し立てを却下。一方で「出席停止処分を科すとすれば裁量権乱用の疑いが強い」とも指摘。

2022年12月5日 12月定例会初日。出席停止4日間の懲罰可決。本会議終了後に青木議員が議会応接室で傍聴の市民に報告していたところ、政治的発言とみなされ中止を命じられる。

2022年12月22日 「香芝市議会議員の庁舎管理規則を順守する決議」で青木議員を非難。

2023年1月24日 出席停止処分議決で裁判の訴えを国家賠償請求に変更。

2023年9月11日 香芝市が議会定例会で生活保護申請の第三者同席「不適切」と答弁。

2023年9月26日 青木議員が香芝市を相手取った損賠請求訴訟が結審。

2024年1月16日 青木議員への出席停止処分は「違法」として、奈良地裁が判決で香芝市に損害賠償命じる。

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