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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

県の登大路ターミナル計画、都市計画道路予定区域内に主要建物 許可基準「容易に移転・除却」満たすのか

県が公表した登大路ターミナルの想像図に都市計画道路の計画区域を示した

県が公表した登大路ターミナルの計画案に「奈良の声」が都市計画道路の計画区域を示した。手前がターミナル、左は県庁、中央奥は県庁分庁舎

奈良市が公開している大和都市計画図と県が公表した登大路ターミナルの平面図を基に都市計画道路の計画区域を示した

奈良市が公開している大和都市計画図と県が公表した登大路ターミナルの平面図を基に「奈良の声」が作成

 奈良県が県庁の東隣、奈良公園の一角に整備しようとしている観光関連施設「登大路ターミナル」。その主要建物の一つが都市計画道路の予定区域内に計画されていることが分かった。建物は鉄骨造り2階建てで、構造と階数を見れば、都市計画法の許可要件を満たす。しかし、「容易に移転または除却できるもの」でなければならない。ホールや展示施設を備え、南北が100メートル近くに及ぶ規模の本格的建築物が該当するのか。県はこれから奈良市に許可申請を行う。

 県がこれまでに公表した資料などによると、同ターミナルは、奈良市の奈良公園内道路の渋滞の原因とされる観光バスの流入を減らすのが狙い。計画では、県営登大路観光自動車駐車場跡地約9000平方メートルに、バスの乗降場や駐機場を囲む形で、いずれも鉄骨造りの3階建ての西棟と2階建ての東棟を配置する。建築面積約3500平方メートル、延べ床面積約7800平方メートルで、飲食・物販店舗や交通管理センター、レクチャーホール、展示施設、屋上庭園などを備える。

 県都市計画室などによると、都市計画道路は県が都市計画決定をした奈良天理桜井線(延長約23キロ、奈良市奈良阪町~桜井市阿部)で、現在の国道369号や169号の幅員を標準で18メートルに広げる。このうち、ターミナル予定地東側の同369号は、現在のほぼ倍の33.5メートルに拡幅する計画。

 計画に基づけば、ターミナル予定地の東側部分が、同国道との境界から10数メートルの範囲で、道路拡幅予定区域に含まれることになる。県が公表したターミナルの平面図と奈良市が公開している大和都市計画図を重ねると、東棟の半分以上が予定区域内にある。

 都市計画決定区域内では都市計画法により建築の規制がある。建築が認められる場合について、同法54条は、建築物の階数が2以下、地階を有せず、主要構造部が木造や鉄骨造り、コンクリートブロック造りのほかこれに類するもので、かつ、容易に移転または除却できるものであれば許可しなければならないとしている。

 さらに、奈良市内において許可権限を持つ市が定めた審査基準は、3階建て以上の建物でも、都市計画決定区域内が2階建てであれば許可している。その際、区域内の部分のみを将来移転または除却することが物理的、経済的に容易であること、残った建築物で機能を発揮できることを条件としている。

 この点で、鉄骨造り2階建ての東棟は階数、構造の上では許可対象だが、建物は都市計画道路に沿って南北が100メートル近くに及び、その端から端までが道路拡幅予定区域内にある。レクチャーホールや展示施設を備え、同ターミナルの主要な機能の一つとされる歴史文化学習を担う。県の委託で業者が2014年7月にまとめた登大路ターミナル付属施設基本計画策定業務報告書では、概算事業費は約30億円と試算されており、東棟は施設の半分を占める。

道路拡幅するかどうか、県次第

 一方で、同都市計画道路のターミナル東側の区間は県管理の国道であるため、将来、計画通りに拡幅するかどうか、また、いつ実施するかなどは県次第という事情もある。同道路の最初の都市計画決定は1933年、追加や変更を経て、最終の決定は2003年。ターミナル東側の区間は、事業着手の前提となる事業認可に至っていない。拡幅計画の見直しを頭の中に描いた上でのターミナル計画とも見える。

 しかし、同都市計画道路のこのほかの予定区域には民有地もあり、同様に建築を規制されている。ターミナル建物に対する許可は、分かりやすく公平なものであることが求められる。

県「許可基準を満足する構造」

 県奈良公園室は「奈良の声」の取材に対し、「東棟は都市計画道路区域と重複しているが、そのことを鑑み、都市計画法第54条の『許可の基準』を満足する構造としている。建物の配置については、都市計画と調整を図った計画を検討してきており、奈良公園地区整備検討委員会でも議論いただいた上で現在の計画としている」と回答した。

 また、「都市計画道路については順次、見直しを実施しているところであり、奈良市域についても、市と連携しながら必要性の検証などを行い、見直しに着手していく方針であることを関係課に確認している」とした。

奈良市「申請まだない」

 奈良市都市計画課は、10月26日の時点で県からの許可申請はまだないとし、建物の階数や構造だけでなく規模も審査に影響するかどうかについては、「申請を見てみないと分からない」と話した。

 同ターミナルは、敷地の3分の2が名勝奈良公園に含まれるため、文化庁に現状変更の許可を受けなければならない。奈良公園室によると、年内に申請できるよう同庁と協議を進めているといい、建設工事は16年9月から18年3月までを見込んでいる。建物の規模が大きいことから、県の審議会「奈良公園地区整備検討委員会」(学識経験者ら12人)の会議では、委員から景観への影響を懸念する意見が出た。

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