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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

奈良市長選候補が回答 市長会見へのメディアの参加資格在り方どう考える 「奈良の声」が公開質問状

奈良市と市政記者会の共催という位置づけで開かれる市長定例会見=2021年5月、市役所(写真は加工しています)

奈良市と市政記者会の共催という位置づけで開かれる市長定例会見=2021年5月、市役所(写真は加工しています)

 「奈良の声」は、7月11日投開票の奈良市長選挙に合わせ、市政を取材するメディアの市長会見への参加資格の在り方と市政記者室の利用の在り方について、立候補者5人に公開質問状を送り、考えを聞いた。(回答期限を7月6日として、7月1日に電子メールで質問状を送信した)

 質問状を送った候補は、谷川和弘、柿本元気、中川崇、仲川げん、三橋和史の5氏(市選挙管理委員会への立候補届け出順)。

 以下に質問と回答。

奈良市長会見の現状について

 市長の定例会見は名目上、奈良市政記者会(日本新聞協会、民放連加盟の14社の記者で構成)との共催になっています。このため、記者会に所属していないメディアが会見に参加するには、記者会の許可を得なければなりません。限定されたメディアでつくる任意組織が、公的な市長会見への参加資格を左右しています。

 記者会に所属していない「奈良の声」は、記者会に対し定例会見への参加を申し入れ、昨年12月から参加を認められています。しかし、傍聴のみという条件付きで、自由に質問をすることは許されていません。

 また、市役所の市政記者室は市政記者会にのみ机が割り当てられ、記者会に所属していないメディアは記者室を利用することができません。

質問

1)市は、市政記者会にのみ市長会見への参加資格を与えるのでなく、記者会に所属していないメディアに対しても、区別なく会見への参加、会見での質問を認めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

2)市役所の市政記者室は市政記者会しか利用できません。市役所の1室を限られたメディアのみが占有することは、市の公用財産の在り方としてふさわしくありません。記者会への所属の有無に関係なく、市政を取材するメディアのための開かれた公的空間とすべきと考えがますが、いかがでしょうか。

3)これらの問題は市長の姿勢一つで改革が可能です。当選後、何らかの改革を行うお考えはございますか。

各候補の回答

(市選挙管理委員会への立候補届け出順)

谷川和弘氏

質問 回答
1)記者会見への参加資格 国民の「知る権利」は民主主義社会をささえる根幹です。記者会見の参加資格に制限を設けるのは透明性の確保や情報公開に逆行します。フリーの記者や通信メディアなども公平に会見に参加でき、情報を発信することが保障されるべきです。
2)記者室の利用 記者室の開放をすすめます。大手日刊紙、テレビ、通信社、地域新聞、ケーブルテレビなど30数社で構成する市政記者クラブがあり、庁内に数か所のクラブ室に記者席を設けて取材活動を行っている事例もあります。
3)改革 情報公開の柱となるものであり、市政記者会との協議を始めます。

柿本元気氏

質問 回答
1)記者会見への参加資格 時間なく回答の対応できない。
2)記者室の利用
3)改革

中川崇氏(7月11日午前11時ごろ回答がありました)

質問 回答
1)記者会見への参加資格 既存の記者クラブへの加盟の有無に関わらず、一定のメディアとして取材の希望があれば参加、質問できるようにしたい。
2)記者室の利用 組合のような組織に貸すのがきれいな形。記者クラブかそれに準じる団体に貸す形で、開かれたものにできないか市長として考えていく。それができない場合は代替の方法を探りたい。
3)改革 1)、2)で回答。

仲川げん氏 (7月11日午前10時16分に回答がありました)

質問 回答
1)記者会見への参加資格 市長定例記者会見は、市の施策を広く市民に広報するとともに報道各社からの取材にお応えするため、新聞社・テレビ局等の報道機関によって構成される「市政記者クラブ」と、奈良市の共催で開催しています。
市政記者クラブは市民に対して市政情報を迅速かつ正確に伝達することを目的に設置されており、中でも新聞・テレビ等のマスメディアは、市民に市政情報を迅速に伝達する手段として有効であり、市民にとっても有効かつ不可欠な広報媒体と考えています。
市長定例記者会見への参加・質問の可否については、市政記者クラブ加盟各社および市と協議していただきたいと考えています。
2)記者室の利用 記者室は、報道機関が奈良市への継続的な取材を通じ、市民の知る権利に応えるため設置されています。また市には市民への情報開示義務と説明責任があり、市に関わる情報を迅速・的確に報道していただくための作業部屋として記者室を設置することは、行政上の責務であると考えます。
一方で現在はマスメディアに限らず、Webメディアをはじめあらゆる方が広報活動・取材活動に取り組むことができる状況です。広く市民に市政情報をお届けするための報道対応および広報手段の在り方について、最適な手段を随時見直し取り組んでいきたいと考えています。
3)改革 市政情報を広く迅速に正確に伝えることは重要であり、2020年10月より毎回の市長定例記者会見の様子はYouTube・SNSで手話付きの動画で公開しています。報道機関をはじめとする各社の取材についても、市民の知る権利に応えるため可能な限り対応してまいります。

三橋和史氏

質問 回答
1)記者会見への参加資格 市長会見は、市政記者クラブ加盟社【任意団体〈新聞社〉朝日、産経、毎日、読売、日経、奈良、時事通信、共同通信、〈テレビ局〉NHK、MBS(毎日放送)、ABC(朝日放送)、KTV(関西テレビ)・YTV(読売テレビ)、TVN(奈良テレビ)】との共催です。市長会見における質問事項及び参加資格については、市政記者クラブ加盟社とご協議していただきたいと考えます。
2)記者室の利用 市政記者室及びその用途については、市が市政記者クラブ加盟社に対し行政財産の使用の許可をしているものと認識しています。本来、市が他者に行政財産を使用させる際は行政財産使用料を徴収すべきですが、災害等が生じた場合に迅速かつ的確に市民等へ情報を提供する役割を担うマスメディアは公共的色彩が強く、特別に使用料を免除しているものと理解しています。その妥当性については、法的観点からも検討を加えてまいります。
3)改革 市政の情報については、透明性及び公平性が担保されなければなりません。一部のマスメディアだけによる情報発信や偏向報道を回避するためにも、報道機関相互の理解により適切に運営されることを望みます。なお、市政記者クラブ加盟社による運営が報道機関の使命に反し、公序良俗に反するような事態に陥った場合等は、この限りではないと考えます。

 質問状には以下の参考情報も添えた。

会見、記者室を開かれたものに改革した全国の事例2つ

【長野県】

 知事会見の主催者は県となっています。会見には、事前申し込みなしで一般県民を含め誰でも参加できます。この仕組みはかつての田中康夫知事が取り入れ、以降、知事は2度変わりましたが継承され、定着しています。

 これまでの会見で、参加者が殺到して進行に支障を来すような混乱が生じたことはないといいます。高校再編のような県民生活に密着する課題があったときは、一般県民からの質問もありましたが、そのようなときでも混乱はなかったとのことです。ここ何年か、一般県民の参加はなく、一方、ウェブメディアや紙媒体のローカル紙の参加があるとのことです。

 かつての記者クラブのための記者室は廃止され、誰でも使える取材活動のための取材控え室に変わりました。

 メディア側から、会見や記者室について元の形に戻せとの要求はないそうです。

 (2020年8月、「奈良の声」が長野県広報県民課に電話で話を聞きました)

【神奈川県鎌倉市】

 市長会見は、市主催のものと鎌倉記者会主催のものが一月交代で開かれます。いずれの会見も、報道活動を行っているメディアであれば、市運営の市広報メディアセンターに登録することで参加でき、質問ができます。新聞やテレビだけでなく、地域のタウン紙や雑誌などその他のメディアも区別なく登録を認められています。

 登録のための申込書は簡単なもので、社名、所在地、連絡先などを記入すればよく、厳しい審査があるわけでもありません。現在、登録メディアは29社に及んでいます。

 会見には通常12~13社の参加がありますが、会見への参加を幅広く認めても、進行上、収拾がつかなくなるというようなことはないそうです。

 かつての記者クラブ(記者室)が市広報メディアセンターに変わりました。センターは登録メディアであれば誰でも利用できます。ただし、鎌倉記者会加盟の6社のみ机が割り当てられているそうです。

 鎌倉市の人口は約17万人です。

 (2021年6月28日、「奈良の声」が鎌倉市広報課に電話で話を聞きました)

報道の自由度を低めている記者クラブ制度

 2021年の世界各国の報道自由度ランキングで日本は67位でした。記者クラブ制度の存在が順位に影響しています。

 調査を行った国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は、日本の報道について「ジャーナリストは、慣習と商売上の利益の影響のために民主主義の監視者としての役目を十分に果たすのが難しい」(原文/But journalists find it hard to fully play their role as democracy’s watchdog because of the influence of tradition and business interests.)と指摘しました。

 その「慣習」の問題として、「記者クラブ制度は、フリーランスや外国の記者を差別し続けている」(原文/The system of “kisha clubs” (reporters’ clubs) continues to discriminate against freelancers and foreign reporters.)と批判しています。 続報へ

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