奈良市、塩漬け土地の巨額借金の返済状況 HPで毎年公開へ
塩漬けとなっている市有地山林の周辺=2013年3月、奈良市二名7丁目
奈良市の用地買収機関だった市土地開発公社(特別法人、2013年解散)が残した巨額の借金の返済を続けている同市は26日、年々どのように返済しているのかその推移をホームページに掲載することを明らかにした。
同公社は、主に3代前の大川靖則市長の時代に市の指示を受け1990年代を中心に、市内ほぼ一円で計約30万平方メートルに及ぶ土地を公共事業の用地取得を名目に買収した。しかし、大半が有効利用されないまま塩漬け状態となった。公社が土地取得のために借りた金の返済のため、市は毎年10億円、一般会計から支出している。
同日開かれた市議会総務委員会(山口裕司委員長、7人)で阪本美知子委員(明日の奈良を創る会)が取り上げ「市民の多くはこんな理不尽な借金返済がなされていることを知らない。毎年10億円あれば、福祉にも教育にも使える」と述べ、情報を広く共有化していくことの大切さを訴えた。
起債は、公社解散に伴い、国が時限立法の特例措置として発行を認めた第三セクター等改革推進債。市は2012年、173億4700万円分の起債を20年返済で発行することを決定した。この措置により、公社が長期の遊休地を保有し、借金の金利がかさんで買い戻し額が高額になるより市財政本体がかぶる金利負担が軽くなる。
委員の指摘を受け、市財政課は起債の推移をホームページに掲載したいと答弁。同課に委員会終了後の取材に対し、「年に1度、グラフなどで返済状況を示す方法も検討できる」と話した。
追加情報の掲載を検討しているコーナーは、市のホームページトップの「市政情報」の「行財政」のうち「行財政改革」の中にある「土地開発公社の改革」のページ。公社解散の経緯などは掲載済み。
土地開発公社を迂回(うかい)させた遊休地の発生は全国の自治体で起こり、公有地拡大推進法の理念を遵守して公共事業用地の先行取得制度を健全に運営した公社は全体の2割にとどまるといわれた。
公社解散に伴い、奈良市の第三者委員会(土地開発公社経営検討委員会、委員長・出水順弁護士)は2011年、議員や団体を介して圧力がかかり、必要性の極めて低い土地が、一般常識では考えられない高値で買い取られていた疑いを公表した。
生駒市では、中本幸一市長(故人)の時代、元議長から買うよう迫られた民間業者の土地を、市が公社を迂回して買収。業者から市長に謝礼が渡ったことなどから、あっせん収賄事件になり、元議長は実刑判決を言い渡された。 関連記事へ