水道広域化の手法さまざま 奈良市が例示 一体化懇談会で
広域化にはさまざまな形があることが示された奈良市県域水道一体化取組事業懇談会=2022年8月4日、奈良市法華寺町の奈良ロイヤルホテル
奈良市は4日、同市法華寺町の奈良ロイヤルホテルで「市県域水道一体化取組事業懇談会」(座長、浦上拓也・近畿大学教授、11人)の第4回会合を開き、水道の広域化の4つのパターンを例示した。現在、県と27市町村で進められている一体化の協議は、県構想に基づき、事業統合と統一料金を前提とした準備であるのに対し、全国の水道の広域連携は多様な形で展開しているという。
異なる料金体系を持つ「経営の一体化」もその1つ。ほかに維持管理や水質検査などを共同で行う管理の一体化という形態も市は例示。また、浄水場などの施設を共同化する広域化もあると解説した。
これらの選択肢が存在することなどを踏まえ、奈良市自治連合会会長の作間泉委員は「奈良市が参加するのかしないのか、との論議に偏った県など県域水道一体化協議関係者らの議論はおかしい」と批判した。
先月12日、浦上座長が指摘した内部補助についての論点も再び取り上げられた。同座長よると、家庭用は安く、大口需要の企業などに負担割合を高く変え、コストのかかるエリアには黒字のところから資金を融通する内部補助の仕組みで水道は成立するという。
これを視野に市企業局は4日の懇談会で、事業統合・統一料金の一体化企業団に参加した場合、奈良市が他の団体に作用する内部補助は30年間で275億円の負担増になる試算を示した。
水源地のダムと市営緑ケ丘浄水場を結ぶ地下の自然流下導水路(10キロ)が稼働して半世紀が経過し、リスク分散のため急がれる複線化工事と一体化の関連性も議題になった。同局は、一体化に参加すれば単独経営より7年早い2025年度(企業団開始予定年度)から調査、設計に入ることができ、国庫補助金、県補助金を有利に活用できる旨を説明した。
これに対し、税理士の田中明子委員は「市民にとって水の安全、安心のために急がれる工事なのだから、一体化への参加、不参加に関わらず重要な問題である」などと話した。
同市の懇談会は、県域水道一体化の協議に参加する県、27町村の中で唯一の第三者の意見を公開で聞く取り組み。今月31日開催予定の第5回が最終回。県は11月にも企業団設立に向けた基本計画案、基本協定案をまとめたい考えだ。 関連記事へ