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ジャーナリスト浅野詠子

部員1人高校分校の狂言部、米寿の村民と舞台 奈良県山添村、新入生ら楽しませる

狂言「清水」を熱演した分校生徒の石本さん(左)と村民の浦久保さん=2025年5月29日、山添村大西の村青年会館、浅野詠子撮影

狂言「清水」を熱演した分校生徒の石本さん(左)と村民の浦久保さん=2025年5月29日、山添村大西の村青年会館、浅野詠子撮影

 山添村立奈良県立山辺高校山添分校(28人)の文化サークル狂言部のたった1人の部員として奮闘する4年生の石本智博さん(18)が5月29日、狂言の芸歴40年の村民、浦久保昌宣さん(88)と同村大西の村青年会館の特設能舞台に立ち、観客となった今春の新入生や教諭ら20人を楽しませた。

 石本さんは桜井市在住。小学生のとき、家族旅行で京都市を訪れた際、初めて見た狂言に強く引かれたという。部での普段のけいこでは浦久保さんも指導に当たっているという。浦久保さんは村内にある大和高原民俗資料館の館長も務める。

 上演前のあいさつで、浦久保さんは「仏教と共に伝来した中国の芸能がやがて能や狂言に発展しました。仏教を広めるには、笑いの要素も大切だったのでしょう。本日は生の人間の舞台を鑑賞してください」と述べた。続いて、石本さんは新入生に向かって「大きな声を出してせりふを語ると、とても気分が爽快ですよ。ぜひ入部をお待ちしています」と呼び掛けた。

 この日の演目は「清水」で、茶会用の水くみを従者に命じる主人を浦久保さん、「鬼が出るから嫌だ」と断る面倒くさがり屋の太郎冠者に石本さん。70歳の年齢差があるが、2人の日ごろの鍛錬の成果が発揮された。

 太郎冠者は渋々水くみに行くが、鬼に襲われたふりをして大事なおけを置いてきてしまう。主人は「取り返しに行く」と決意し、石本さん扮(ふん)する太郎冠者の慌てぶりがヤマ場。観客席の生徒たちは盛んに拍手を送っていた。

 同分校は昼間定時制で、本州唯一の村立高校。村は財政を理由に2026年度から生徒の募集を停止する方針。村議会の賛否は拮抗(きっこう)している。

筆者情報

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