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ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)広域水道企業団と7市の統合議案を否決 大阪府和泉市議会

大阪府和泉市役所。6階の議場で水道統合に関する議案が否決された=2023年3月24日、同市府中町2丁目

大阪府和泉市役所。6階の議場で水道統合に関する議案が否決された=2023年3月24日、同市府中町2丁目

 大阪府和泉市(人口約18万3500人)の市議会(定数24)は定例会最終日の3月24日、大阪広域水道企業団(用水供給事業者)と同市を含む7市との経営統合に向け、辻宏康市長が提案した規約変更などの関係議案を賛成少数で否決した。昨年8月には、同じ枠組みだった大東市が協議から離脱し、事業の開始目標を2024年4月とする統合の形態は変更を余儀なくされそうだ。

 賛成11、反対12の1票差で決まった。先月24日の市議会都市環境委員会でも「市議会の決定権がなくなる」などの厳しい意見が相次ぎ、統合議案は否決されている。

 7市は、同市ほか東大阪、岸和田、八尾、富田林市、柏原、高石。同企業団広域連携課によると、すでに5市議会が関係議案を可決し、残る東大阪市議会は28日に採決が行われる。「統合の効果額は7市の参加を前提に公表しており、和泉市が抜ければ試算をやり直す。予定通りに2024年度の統合開始とするのかなど、改めて6市と細部を協議する」と話す。

 府域一水道を目的に将来は料金統一を目指す構想。中央監視室を集約することなどにより、国庫補助金14億5000万円(10年間の時限措置)が和泉市に入り、市は老朽管の更新、料金の抑制に有利などとして市議会に統合を提案していた。

 反対討論に立った山本秀明議員(明政会)は「人口の多い大阪市、堺市が加わらず、府内でも経営基盤のしっかりとした半分近い自治体は企業団との経営統合をする判断をしていない。府域一水道のめどはついておらず、後戻りが困難な経営統合に本市が踏み切れば、将来的には人口規模の小さい経営基盤の弱い参加自治体を、和泉市民の水道料金で支えていかなければならないことは否定できない。経営統合ありきで市は技術職員の募集努力を怠ってきたし、企業団に入れば水道の福祉減免も廃止される。市民サービスは低下し、自治権を放棄するのは時期尚早」と述べた。

 賛成討論に臨んだ坂元純一議員(維新)は「今後どのような社会情勢に直面しようとも、公共財産である水資源の安定供給を将来世代にわたって確実なものにしていく市長の決意として統合を受け止めている。近隣自治体と比べ、本市の水道事業は高い経営水準を維持しているが、これからの人口減少による給水収益の減少、水道施設の老朽化による更新費用の増加、技術の継承問題などさまざまな課題を考えると、備えは順調な時期から先手で挑まなければならない。改正水道法は水道の基盤強化を市町村事業者の責務として明確にし、そのための都道府県による広域連携を規定している。統合は必ず成し遂げなければならない施策」とした。

 統合による水道の減免廃止や企業団議会に対する疑問は、同委員会で出ていた。吉川茂樹委員(公明)は「水道の福祉減免廃止で3500世帯ほどに影響が出る。企業団議員の定数も論議中で、市としての意見を言えるのか不透明」とし、早乙女実委員(共産)は「企業団議会は一団体一議席が保障されていない。市や市議会の意見が反映される保障はない」と訴えた。

 和泉市水道の自己水源比率は2割。戦前に築造された農業用ため池光明池を主水源に市営浄水場を営む。残る8割は大阪広域水道企業団から用水を購入。市上下水道部によると「防災上、ため池を水源とする浄水場を存続する意見が議員から出ている」と話す。 関連記事へ

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