奈良県域水道一体化の関連議案を僅差で可決 大和郡山市議会、建設委採決覆る
奈良県域水道一体化の関連議案を可決した大和郡山市議会=2023年3月13日、同市北郡山町の市役所
奈良県大和郡山市議会は定例会最終日の3月13日、県域水道一体化への参加に向けて市が提案した、県広域水道企業団(一部事務組合)設立準備協議会の設置議案など関連議案を賛成多数で可決した。賛否は僅差だった。市議会では、2025年度に水道企業団の設立を目指す県主導の一体化計画に対し、慎重な意見が少なくないことをうかがわせた。
討論では、尾口五三議員(共産)は反対の立場から「地方自治法は住民の福祉と健康を守るのが自治体の責務であると説く。水道のすべてを企業団に渡すことは市としての役割放棄ともいえ、反対しかとる道はない。(大和郡山市などが優先されるといわれる)持ち寄り資産の配分投資ルールや昭和浄水場の存続方針は議事録に残っているだけで、契約書などの正式な文書は残らない。企業団にすべてを無償で引き渡すことになり、どのようなことになるのか保障されていない」と訴えた。
賛成の立場からは河田和美議員(公明)は「10年、20年先のことでなく、もっと先の将来を見据えることが大切。市の水道料金収入はピーク時と比べ10億円近く減少した。水道の老朽管率は、県内で3番目に高い。82億円あった内部留保資金がこの4年間約71億円に減ったのは、毎年、管路更新率1.5%の対策工事を実施しているからだ。企業団に入れば持ち寄り資産の優先投資配分があり、10年間、国庫補助・県支援金を活用しながら現行の管路更新率を維持できる。人口が減ったとしても管路は減らせない。(一体化の反対者は)どうやり繰りするつもりなのか」とけん制した。
関連議案のうち、一般会計に移されていた内部留保資金の一部約28億円を巡っては、一体化参加を前提として水道会計に戻す議案に対し、関本真樹議員(豊政会)が28億円を減額する修正案を提出、「一体化のシミュレーションは疑問が残り、単独で行く場合の検証が十分になされておらず、県水の受水比率を下げるなどして市が単独でやっていかれる可能性は十分ある。経営権を市が持ち、最大限の努力をした上で料金を決定していく方が納得感が得られる」と訴えたが、賛成少数で否決された。
県広域水道企業団設立準備協議会の設置議案など2議案は、3月2日の建設水道委員会では賛成少数で不承認となっていた。
県広域水道企業団設立準備協議会は、県と26市町村で設立を目指しており、「法定協議会」と呼ばれる。県水道局は「設立準備協議会の設置について議決を求めることは、企業団設立のための必須条件ではないが、地方自治法に基づく議会を尊重するための行為」としている。
企業団議会の定数や定数配分などを盛り込んだ企業団規約案は2024年度、各市町村議会に諮られる。今回の議会で争点となった設立準備協の設置議案以上に重要な手続きになるとみられる。「この統一地方選の争点にしたい」と話す議員もおり、水道一体化を巡る大和郡山市議会の論戦はまだ続きそうだ。 関連記事へ