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ジャーナリスト浅野詠子

水道一体化構想、市町村単独経営の財政シミュレーション「開示すべき」 奈良県情報公開審査会が記者の不服請求で答申

審査会の答申(左)と県が大半を不開示とした市町村の財政シミュレーション

審査会の答申(左)と県が大半を不開示とした市町村の財政シミュレーション

 奈良県域水道一体化構想に関連して、関係市町村が単独経営を続けた場合を想定して実施した財政シミュレーションの大半を、県が不開示としたことを不服として「奈良の声」記者が行った審査請求について、県情報公開審査会(会長、野田崇・関西学院大学教授)は9月20日までに、山下真知事に対し「開示すべき」と答申した。

 記者は2022年5月、県情報公開条例に基づき、県と27市町村が統合の効果と比較するため2021年12月に作成した財政シミュレーションのうち、市町村が単独経営をした場合の投資額などに関する文書を開示請求した。

 これに対し県は、25市町村が算出した単独経営想定のデータのうち2054年までの33年間の水道管更新額や浄水場の経費、人口の推移などの予測値を不開示とした。 「奈良の声」既報

 県は弁明書で不開示の理由について「公開すれば率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれ、県民の間に混乱を生じさせる恐れがある」などと主張した。

 答申によると、審査会は、議会に単独想定のシミュレーションを公開していた奈良市(一体化不参加)と葛城市(同)に対し「混乱が生じた事実はあるか」聞き取り調査を実施したが、そうした事実は確認できなかったという。

 また県は「公開すれば、独自のシミュレーションが乱立し、誤解や憶測に基づく無用の混乱が生じる」とも主張した。

 これに対し審査会は「仮に独自のシミュレーションが複数作成され、すでに作成されたものとの相違が生じたとしても、適切に情報提供を行い、相違が生じた理由を説明することで県民の不安や混乱は回避できる」とした。

 財政シミュレーションを巡っては、一部の市町村から「公開すると単独経営を想定した投資の見込み額が、他の市町村の額と比較されて困る」などの要望があり、県の判断に影響した。審査会は、そうした要望が不開示妥当の根拠にはならないとし「水道事業の統合に当たっては、事業の目的や必要性などについて県民に説明する必要がある」とした。

 県水道局県域水道一体化事務局は取材に対し「審査会の答申を尊重して開示すべきかどうか検討している」と話した。 関連記事へ

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