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地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道


浅野善一

ハイパーローカル・ジャーナリズムの可能性探る 立命館大で市民メディア交流 「奈良の声」など全国3者が取り組み報告

「メディフェス2024 in 関西」のハイパーローカル・ジャーナリズムの可能性を探った集会=2024年11月23日、大阪府茨木市の立命館大学大阪いばらきキャンパス(写真は主催者提供)

「メディフェス2024 in 関西」のハイパーローカル・ジャーナリズムの可能性を探った集まり=2024年11月23日、大阪府茨木市の立命館大学大阪いばらきキャンパス(写真は主催者提供)

 ハイパーローカル・ジャーナリズムの可能性などを探る集まりが11月23日、大阪府茨木市の立命館大学大阪いばらきキャンパスで開かれた第19回市民メディア全国交流集会「メディフェス2024 in 関西」(同実行委員会など主催)であり、3つの地域のウェブメディアが登壇。「奈良の声」もその一つとして取り組みについて報告した。

鹿児島の屋久島ポスト、茨城のNEWSつくばと共に

 ハイパーローカル・ジャーナリズムは、新聞やテレビだけでは伝えきれない地域の問題を、より住民に近い視点で取り上げる報道などをいう。近年、大手メディアの地域取材網の縮小が指摘される中、ウェブなどを活動の場として、こうした報道を軸に据える地域メディアが各地で誕生しつつある。

 集まりの演題は「ジャーナリズムをやってみよう:ハイパーローカル・ジャーナリズムのすすめ」。司会の小川明子・立命館大学映像学部教授は、地域について報道するメディアがない「ニュース砂漠」が世界中で広がっていると問題提起。これを受けて、屋久島ポスト(鹿児島県)の武田剛共同代表とNEWSつくば(茨城県)の鈴木宏子記者、「奈良の声」代表浅野善一がこれまでの実績や課題について報告した。

 屋久島ポストは発足して丸3年。町長らの出張旅費不正請求など町政を巡る問題が続いた屋久島町の行政監視を掲げて住民有志が始めた。武田さんは、記事掲載に費用が不要な無料ブログを利用していることについて「市民が誰でも調査報道ができるようなメディアに挑戦している」と説明した。武田さんは島外から移住した朝日新聞の元報道カメラマン。

 NEWSつくばは、7年前に休刊した茨城県の地域紙、常陽新聞の元記者らが設立した。地域のニュース報道を担ってきたという自負から、その担い手がなくってしまうことに危機感を持ったという。著名建築家の代表作という建物の改修計画を、報道によって市に撤回させるなどの成果を上げてきた。鈴木さんは「地域でネットワークを組み、ニュース砂漠をどう打開していくか模索したい」と述べた。

 「奈良の声」の浅野は「地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道」を方針に「奈良の声が取り上げることで問題が顕在化するような取材に努めている」と説明。県域水道一体化の問題などこれまでの調査報道や独自ニュースの具体例を挙げて、どのようにニュースを生み出してきたかその取材過程などについて話した。課題としては運営費用や書き手の確保を挙げた。

 報告の後は、こうしたメディアの支援方法などについて議論。会場のホワイトボードを利用して、参加者に自由に意見を書き込んでもらった。サポーターをどう増やすかでは「座談会などおしゃべりできる場をつくる」「地域の小中高大の授業で(活動を)紹介」「ウェブ記事の印刷を地域の交流の場に置く」など、収益化を図る手段では「ニュース解説動画をユーチューブに載せるなど多メディア展開を」「ローカル調査報道に特化したポータルサイトを作り、寄付を募る」など、さまざまなアイデアがボードを埋めた。

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