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浅野善一

奈良県民俗資料保存検討委の会議非公開「決めたのは委員会」 設置要綱に知事答弁の根拠規定なし

民俗資料収集・保存方針等検討委員会の設置要綱

民俗資料収集・保存方針等検討委員会の設置要綱

 奈良県立民俗博物館が収集した民俗資料の保存の在り方について意見を聞く、県の民俗資料収集・保存方針等検討委員会の会議が非公開となっていることを巡り、山下真知事が県議会6月定例会で「決めたのは委員会」と述べた問題で、同委員会の運営方法を定めた設置要綱自体には、会議の公開、非公開の決定を委員会の責任とする規定がないことが分かった。決定の責任が県と委員会のどちらにあるのか明瞭さを欠いている。

 同委員会は外部の有識者5人で構成され、日高真吾・国立民族学博物館教授が委員長を務めている。

 県は設置要綱を公開しておらず、「奈良の声」は開示請求で入手した。要綱は8カ条から成り、会議に関する規定は第5条の「会議の招集」のみ。公開、非公開に関する規定はない。また、運営に関しても委員会の責任とする規定はない。第5条は「会議は、(県)文化財課長が招集する」となっていて、第8条には「この要綱に定めるもののほか、委員会の運営については必要な事項は、文化財課長が定める」とある。

 一方、県の別の審議会などの例では、会議の公開、非公開の決定を審議会などの責任とする場合は要綱などで明確にしている。「平城宮跡歴史公園歴史体験学習館の整備に関する検討委員会」(整備計画は中止)の運営要領には「委員会の会議は委員長が委員会に諮って全部または一部を非公開とすることができる」との規定がある。このほか「この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に必要な事項は、委員長が委員会に諮って定めるものとする」との規定もある。

 県文化財課の課長補佐は、設置要綱に会議の公開、非公開の決定を委員会の責任とする規定がないことについて、「奈良の声」の取材に対し「何でもかんでも文化財課長が決めるわけではない。県から委員会に聞いて非公開を決めていただいた」と述べた。

 6月25日の定例会一般質問では、会議の公開を求める議員の意見に対し、知事は「活発な意見交換ができる環境が阻害される恐れがある。(会議の公開、非公開などについては)委員会で議論して決めており、私に聞かれても答えられないし、私にそれを指図する権限はない」と答弁。

 同月27日の県議会文教くらし委員会でも、疋田進一委員長(当時)=自由民主党・無所属=が設置要綱の第8条の解釈について、会議の公開、非公開を決める権限は県にもあるのではないかと質問。県地域創造部長は「決める権限は委員会がお持ちと思っている」と答弁している。

筆者情報

知事、民博資料保存方針の検討委非公開「決めたのは委員会」と答弁も 設置時に原則公開の付属機関とせず

奈良県議会6月定例会で質問する金山成樹議員(後ろ姿)と質問を聞く山下真知事(奥中央)=2025年6月25日、奈良市、浅野善一撮影

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