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ジャーナリスト浅野詠子

本州唯一の村立高校、奈良県・山辺高山添分校 2026年度から募集停止を表明 村長、村議会で

存続の危機に直面している山辺高校山添分校=2025年3月4日、同村大西、浅野詠子撮影

存続の危機に直面している山辺高校山添分校=2025年3月4日、同村大西、浅野詠子撮影

 本州唯一の村立高校として75年間、村民をはじめ県境の三重県伊賀市民らと共に歩んできた山添村立奈良県立山辺高校山添分校(同村大西、32人)が存続の危機に直面している。設置者が村、管理者が県という形態を解消するよう県教育委員会から求められ、多数の存続要望署名が集まる中、村長は4日、閉校に向けた決意を表明した。

 村議会の3月定例会が同日、開会し、これに先立つ全員協議会で、野村栄作村長は、2026年度から生徒の募集を停止、2029年3月に閉校とする方針を明らかにした。

 昼間定時制の農業科・家政科がある伝統校。県教育委員会は現在の形態を解消するよう数年前から村に促し、早期の回答を求め、村長の判断が注目されていた。

 存続を求め、県内外から3000人を超える署名が集まっているとされ、うち村内では有権者の5分の1に当たる527人が署名した。

 定例会本会議で野村村長は「入学を希望していた人々に申し訳ない」と陳謝した。村が管理する高校(本校化)として存続させることは、財政上の理由から困難とした。

県教委冊子「2026年度県立高入学者選抜」に山添分校の記述なし

 県教育委員会が発行する冊子「2026年度県立高校入学者選抜の方向性」の中に山添分校の紹介がなくなっていることが、この日の野村信介議員の一般質問で分かった。これまでは毎年、山添分校が掲載されていたという。

 野村議員は「分校に関心を持つ中学生や保護者を不安にさせる」と批判。「山添分校の存在は村条例で規定されている。生徒の募集を停止し閉校するには条例の改正が必要ではないか」とした。こうした見方に立てば、議会の判断を待たずに県教委の冊子が発行されたことになる。

 また、野村議員は「山添分校の年間予算は1800万円で一般会計の0.5%。三重県の伊賀市、名張市からそれぞれ約10人の生徒が通学し、県境を越えた定住圏構想にも合致する」と訴えた。

 傍聴席10席は村民や報道関係者で埋まり、立ち見の傍聴者が議会の審議を熱心に見守った。6、7日の非公開の文教厚生委員会で論議されるとみられる。

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