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浅野善一

平城宮跡公園の元学習館予定地と南側の計画見直し 県部会「奈良の“食”でにぎわいを」 知事意向「民設民営」前提に

中止になった歴史体験学習館計画の用地。かつて道路の両側には住宅が立っていた。奥は平城宮跡に復元された朱雀門=2024年12月6日、奈良市二条大路南3丁目、浅野善一撮影

元歴史体験学習館の予定地。計画見直しで整備の在り方が検討されている。奥は平城宮跡に復元された朱雀門=2024年12月6日、奈良市二条大路南3丁目、浅野善一撮影

 平城宮跡歴史公園(奈良市)の県営公園区域の計画見直しを受けて、新たな整備の在り方を検討している県観光戦略本部平城宮跡周辺エリア部会(委員長・内藤廣東京大学名誉教授、10人)の会議が1月27日、県庁であった。「奈良の“食”を中心としたにぎわいづくりを進めていく」との方向で委員の意見が一致した。同区域では、前知事時代の大型事業の見直しで歴史体験学習館計画などが中止になっている。

 同部会は昨年9月から検討を進め、今回の会議は4回目。県公園企画課によると、山下知事は計画の見直しに当たって、県による“箱物”の整備ではなく「民設民営」を前提とした整備の意向を示しているという。次回3月の会議では、具体化に向けて事業手法などを取りまとめる予定。

 検討対象となっている県営公園区域は、朱雀門前の朱雀大路跡を挟んで東側地区(9000平方メートル)と西側地区(3万1000平方メートル)、さらに大宮通りを挟んで南側地区(5万平方メートル)がある。西側と南側には工場、東側には住宅地などがあったが、県は計画の進捗(しんちょく)に合わせ順次土地を購入していった。

 このうち西側地区には2018年、県が建物を建てるなどして飲食店や土産物店、休憩所、駐車場ができた。さらに計画では、東側地区に歴史体験学習館を建設する予定だった。南側地区では休憩施設や便益施設の整備を検討していた。しかし、2023年4月の選挙で荒井正吾前知事を破って就任した山下真知事は、前知事時代の大型事業の見直しを進め、これらの計画もその対象となった。

 歴史体験学習館計画では、世帯数は少ないながら一つの住宅地が丸ごと立ち退きの対象となった。知事が代わった時点で計画地の土地の買収はほぼ済んでいた。山下知事は計画を見送った理由について「(周辺には)すでに立派な(公園施設の)建物が数多くあるが、あまり客が入っていないと言わざるを得ない」と説明した。

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