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4月18日第3回「奈良の声」読者会お知らせ~読者が開く読者の集い

浅野善一

職員に有償ボランティア 労働法令順守の基準満たさず 奈良県香芝市、交流施設指定管理者の自治会 住民声きっかけ雇用に切り替え

香芝市地域交流センター=2026年3月5日、奈良県香芝市白鳳台1丁目、浅野善一撮影

香芝市地域交流センター=2026年3月5日、奈良県香芝市白鳳台1丁目、浅野善一撮影

 奈良県香芝市の自治会が、指定管理者制度に基づいて運営を任された市の地域交流施設の職員に、住民による有償ボランティアを充てていた。住民から自治会上層部への指摘がきっかけとなり、今年度から雇用に切り替えられた。地方自治法に基づいて市が自治会に示した業務仕様書の基準を満たしていなかった。

 基準では、職員の労務管理について関係法令(労働法などを想定)を順守するよう求めている。市には指定管理者へのモニタリングを通じて改善を勧告する機会があるが生かされなかった。

 市地域交流センターは市北部の新興住宅地、白鳳台(1、2丁目、2026年2月末の市人口表で643世帯)にある。2017年11月の開館当初から現在まで、白鳳台自治会が市の指定管理者として管理運営を代行している。1回の指定期間は3~5年で、現在は3回目の指定。

 指定管理者制度は、都道府県や市町村が公共施設の管理運営を民間事業者などに代行させるもので、地方自治法に基づいている。民間の知識・技術の活用による住民サービスの向上や行政の経費削減が期待されている。指定管理者には人件費などを含む指定管理料が支払われる。

 2026年3月22日の同自治会総会。センター館長は住民の質問に答える形でこの問題について説明した。「奈良の声」の取材では、「ボランティアは労働法上の問題が一切ない。雇用契約を結ぶと、有給休暇などさまざまな法的問題を解決する必要があるため、有償ボランティアでやってきた」などと述べ、この4月から就業規則を設け、雇用契約を結ぶことになると述べたという。

 地方自治法では、地方公共団体は指定管理者が行う管理の基準および業務の範囲その他必要な事項を定めるとしている。市は、センターの管理運営に当たって同自治会が行う業務の範囲や業務上、満たすべき基準を同センター指定管理業務仕様書で示した。このうち職員に関することは「組織・運営体制」の章で示された。

 そこでは、業務を実施するために管理責任者(館長、副館長)や従事者などの職員を配置することを求めるとともに、職員は業務を円滑・安全に実施する責務を負っていることを明記。一方で、職員の労務管理、安全衛生管理については関係法令を順守するよう求めている。市の市民環境部次長は「関係法令」として想定されるのは労働法だと取材に対し答えた。

 しかし、実際には館長を含む「職員」13人すべてが有償ボランティアだった。運営体制は館長1人、副館長6人、受け付け担当6人。通常は2人の体制で、業務は主に部屋の利用者の受け付け。勤務の頻度はほぼ週1回。全員が自治会住民。

 開館から足かけ9年になるが、この間、労働基準法などに基づく労働基準監督署への就業規則の届け出や雇用契約の締結はしていなかった。館長は取材に対し「皆、ボランティアという意識でやってきた。ボランティア側からクレームはなかった」と述べた。

ごみ焼却場建て替えの地元還元

白鳳台の住宅地とごみ焼却場(右上)=2026年3月21日、奈良県香芝市、浅野善一撮影

白鳳台の住宅地とごみ焼却場(右上)=2026年3月21日、奈良県香芝市、浅野善一撮影

 なぜボランティアなのか、自治会が指定管理者となった経緯をたどる。

 当時、白鳳台住宅地の先にあるごみ焼却場「美濃園」(香芝市と王寺町が共同で運営)が老朽化、建て替えが進められようとしていた。市は周辺の複数の自治会に同意を求めるとともに要望事項の提示を求めた。白鳳台自治会においては既存の白鳳台集会所の建て替えが検討されていた時期でもあった。自治会は、集会所隣りにあった市4号公園へのコミュニティセンター建設を要望することを、2014年3月の総会で決議した。

 市は広さ1800平方メートルの同公園を廃止して、市地域交流センターを建設した。建物は鉄骨造り2階建て、延べ床面積600平方メートル。集会室、調理室、会議室2室、和室などを備えた、集会所を大きく上回る規模の施設となった。建設工事費は2億1500万円(当時の市一般会計決算書から)。新しいごみ焼却場は2024年9月に操業を開始した。

 自治会による管理運営は建設要望当初からの希望だった。自治会は「安く便利に活用するため」として、市と交渉を重ねた。(2026年3月27日付自治会回覧「香芝市地域交流センター建設に関わる経緯と『交流センター運営委員会規程』制定の背景説明」から)

 市は自治会の意向を酌んだ。市地域交流センター条例の制定に当たっては、必要があるときは管理運営を指定管理者に代行させることができることとし、指定管理者の指定には当たっては公募を原則とする一方、特別な事情があるときは公募でなくてもよいとした。

 市は市指定管理者選定委員会への諮問、市議会での議決を経て、白鳳台自治会を指定管理者に決定した。指定の理由は「地元自治会という地域に根付いた団体が管理運営を行うことで地域住民と(施設)の連携がより一層図られる」などとされた。2017年9月、同自治会と管理運営に関する基本協定を締結した。指定期間は同年11月から2020年3月までとされた。

 ただ、市には自治会を指定管理者にすることへの不安もあった。当時、市長の職にあった吉田弘明市議会議員は取材に答えて振り返った。

 ごみ焼却場に関する地元との過去の協定では、建て替え時には移転をすると約束していたが、検討の結果、同じ場所での建て替えとなった―。こうした経緯などを挙げて、地域交流センター建設の意義に言及、その上で次のように述べた。

 「私は当初、反対した。自治会に運営能力があるのか。自治会は継続して能力を維持できる組織ではない。一方で(担当の市局長に対し懸念される点を)解決できるならいいとも伝えた。(局長から)まずは1年間、(自治会の)勉強のため、指定管理者事業の会社(取材では実名)にサポートさせるとの答えが返ってきたので、ゴー(進めていい)を出した」

 センター建設や自治会による管理運営を要望するに当たって、自治会長として市と交渉してきた元会長は、当時の認識について「奈良の声」の取材にこう述べた。「(管理運営は要望したが当初は)指定管理者という言葉自体、知らなかった。市とのやり取りでも管理人という言葉を使っていた。われわれは全員素人(だった)」。サポートを担ったのは市の施設で指定管理者の実績がある会社で、自治会が顧問契約を結んだ。サポートの期間は1年半あったという。

 元会長は2022年度まで9年4カ月、自治会長を務めた。2023年度まではセンター館長も兼務、2024、25年度も後任の現館長の相談役としてセンター参事を務めた。

 「職員」を有償ボランティアとしたことについて、こう説明した。「従事者は自治会役員と同様にボランティア。従事内容からわずかだが報酬を支払った。市からもらっている金(指定管理料)の範囲でしないといけない。余ったら返すが、足らなかったら自治会が弁償しなければならない。だから余計に人件費(が伴う職員)はボランティアでお願いしますということになった」。採用に当たっては、元会長が自身の知り合いの中から経理に明るい人を選んだという。

 指定管理者1回目、2017年の業務開始時のボランティアへの謝礼は時給500円。当時の奈良県の最低賃金を下回っていた。指定から3年目、指定期間最終年度の2019年、これについて「最低賃金以下では好ましくないのではないか」と指摘したのは、市ではなく契約している税理士だった。以降、時給に関しては最低賃金を下回らないようにしたという。

 自治会は市から支払われる指定管理料とセンターの利用料金収入を合わせた額で経費を賄うことになる。結果として、1回目の指定期間中の指定管理料合計額2770万円に対し470万円に上る剰余金が生じることになり、市に返還した。

 市が自治会に示した業務仕様書は、人件費(職員の給料など)を指定管理料に含まれるものとして挙げている。ほかに施設管理費(修繕費など)、光熱水費(電気、水道、ガス代)、事務費(消耗品費など)、自主事業費(講演会、音楽会など)があり、対象は経費全般にわたっている。

 現在の指定期間2023~2027年度5年間の指定管理料の総額は5500万円。1年間に1100万円が支払われる。一方、利用料金収入は館長によると、2025年度で年間170万円ほどだったという。経費が収入を上回った場合、「市地域交流センターの管理運営に関する基本協定書」は、自治会が自らの費用で処理するとしているものの、最終的な決定は両者の協議によるとしている。

 指定管理者制度において労働法令の順守は課題とされるものの一つ。総務省は2010年12月、都道府県や市町村に向けた通知の中で「指定管理者が労働法令を順守することは当然であり、雇用・労働条件への適切な配慮がなされるよう、留意すること」などと助言。

 2024年6月の通知ではその対応として、指定管理者選定委員会に労働法令の専門家を加える▽社会保険労務士による労働条件審査の導入▽モニタリングに使用する労働条件チェックリストに社会保険労務士を活用―を挙げた。

 取材では香芝市に同種の対応はなかったが、基本協定書は指定管理者へのモニタリングの結果、業務仕様書などで示された条件を満たしていない場合、改善を勧告できるとしている。労務管理について仕様書に示された関係法令の順守はお題目だったのか。

 市民環境部次長は、関係法令を順守しているかどうかなどについて点検する機会を設けているかどうかについて「モニタリングの機会に確認を取れるが、(過去に)それらについて個別具体的にチェックしてきたどうかは分からない」と答えた。 

指定管理業務と自治会活動の区別を巡って

 住民の間から上がった声をきっかけに検討が行われた問題はほかにもあった。指定管理業務と自治会活動の区別。白鳳台自治会の関連団体が部屋を使用するときの利用料金を指定管理料から経費名目で支出していることや、白鳳台集会所にあった自治会事務所を閉鎖してその機能をセンターの管理事務室に移したことなどである。

 関連団体とは自治会のほか老人会や子供会、生涯学習学級などで、自治会なら定例会議などで部屋を使用してきた。元会長は取材に対し「市に許可をもらっている。指定管理者の自治会のことなら(業務仕様書が認めている)『自主事業』的なことになるであろうと解釈してくれた」と述べた。

 「自主事業」について業務仕様書は講演会や音楽会を例示している。市民環境部次長は「地元団体への還元という考え方もできる」と述べた。ただ、自治会が提出する指定管理の事業計画書に関連団体への部屋の提供について自主事業としての記載がないことから「今は自主事業ではない」とも述べた。その上で「このやり方に疑義があるなら改善したい」と述べた。

 一方、自治会事務所の閉鎖は開館から2年目の2019年度とみられる。この年、集会所は会議室1室を除いてトイレや台所が倉庫に改修された。それまで自治会事務所で要した経費が指定管理業務の経費に移転していないかという疑問を住民に抱かせた。

 元会長によると、事務所閉鎖の理由は、当時、自身が自治会長と館長を兼ねていたことから、いちいち両施設の間を移動するより効率的だったためという。「指定管理者業務と自治会業務は分けている。指定管理者は白鳳台自治会であり、本来の指定管理業務に支障を及ぼさない限り、許容されるのではないかと考えた。市の許可を得ている」

 「(電話代に関しては)センターで自治会住民からの電話を受けることはあるが、発信は自治会役員が自身のスマートフォンからしている。コピー代は使用記録を取って、それぞれが負担している」。その上で「今後は市と話し合い、適切でないのであれば改善していく」と述べた。

 一方、市民環境部次長は「指定管理の業務と自治会の業務は分けていただく。必要があれば指導していく」と述べた。

◆ ◆ ◆

 自治会住民の間から上がった声が変化につながっている。自治会は、設置している市地域交流センター運営委員会の活動に関し規程と基本方針を制定した。規程は運営委員会の位置付けや役割を明確にした。運営基本方針は、センターの管理運営に当たって業務仕様書に沿った運営を行うこと、職員の雇用は労働関係法令を順守することを明確にした。

 3月27日付自治会回覧は制定の経緯についてこう述べている。センターの運営は、設立当時から関わってきた自治会長・館長が主となり担ってきたが、自治会住民の意見、要望を受けて運営委員会の役割の再認識が必要になったとしている。

 吉田議員に今後の指定管理の在り方ついて意見を聞いた。同議員は「個人的には」と前置きして「自治会の指定管理者を否定するのではなく、専門のプロ(指定管理者事業の会社)と交互に管理運営をやって、レベルを高めるというやり方もある。健全な運営につながるのでは。人事と同様、同じだと弊害もある」と述べた。

 市が指定管理者に管理運営を代行させている施設のうち、指定管理者が自治会なのは市地域交流センターのみ。

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