奈良県御所市の健康増進施設整備で協定書 費用、衛生事務組合が実質負担 広域ごみ処理の地元還元事業
御所市健康増進スポーツ施設の予定地=2023年6月6日、同市小殿
奈良県御所市、五條市、田原本町でつくる「やまと広域環境衛生事務組合」(管理者・東川裕御所市長)が御所市内に建設したごみ焼却施設に対する地元還元施設の健康増進スポーツ施設を、御所市の施設として設置することについて、組合と同市が費用の負担に関する協定書を交わしたことが分かった。国の補助金を除いた整備費や運営、維持管理費など組合が費用を実質負担する。
「奈良の声」は御所市への開示請求で、ごみ処理施設建設事業に伴う地元還元施設整備に関する協定書、整備費用の内訳表、計画のスケジュール表を入手した。
協定書の締結日は2023年4月1日。組合の事業に伴う施設を御所市の施設として設置するという特別な形を取ったのは、同市の公園施設として設置すれば、建設費の2分の1を国の補助金で賄うことができるため。これによって組合を構成する3市町の負担を抑えられるという。
一方で、やまと広域環境衛生事務組合という地方公共団体が別の地方公共団体の御所市の経費を負担することについては、地方財政法に抵触する可能性もある。
地方財政の健全性確保を目的とした同法は、地方公共団体は他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならないとし、寄付金を割り当てて強制的に徴収するようなことをしてはならない▽地方公共団体の事務の経費は当該の地方公共団体が全額負担する▽経費の負担を転嫁し、相互の間における経費の負担区分を乱すようなことをしてはならない―などと定めている。
組合によると、協定書はこの点を踏まえて締結されたものという。健康増進スポーツ施設の整備、運営について、組合、御所市それぞれの役割と費用負担の区分を明確にした。組合事務局長は取材に対し「3市町長と組合管理者で合意し、組合議会も承知している。構成3市町の各議会からも異論は出ていない」と説明する。
協定書によると、施設は御所市が事業主体となって整備し、整備後は同市に帰属。運営、維持管理も同市が行う。一方、費用負担については、同市が支出する整備、運営、維持管理の費用のうち、一般財源相当額を組合が負担金として支払う。組合はごみ処理施設の発電の売電収入を負担金に充てる。
施設の建設費の財源となる国の補助金や地方債の地方交付税交付金への算入分を差し引いた残りが一般財源相当額になる。このため御所市の実質的な負担はない。
公園施設としての健康増進スポーツ施設の設置者を御所市としたのは、同じ地方公共団体でも、やまと広域環境衛生事務組合のような一部事務組合には都市計画決定ができないため。市は2022年4月、施設の設置場所として同市小殿の土地約1万4000平方メートルを市総合運動公園に追加する都市計画決定を行った。
計画によると、健康増進スポーツ施設は建築面積約2000平方メートルで、トレーニングルームやプール、多目的室、温浴施設などがある。事業費は土地購入費を含め約18億円の見込み。土地は購入済みで、これから着手する施設の建設費約14億円のうち、浴室や脱衣室を除いた費用の2分の1が国土交通省の社会資本整備総合交付金の対象になる。開業は2026年3月の予定。
同組合のごみ処理施設は、御所市が単独で運営していた同市栗阪のごみ処理施設の跡地に広域の施設として建てられ、2017年6月、操業を開始した。健康増進スポーツ施設は地元対策の一つ。同施設の費用負担の在り方を巡っては、2016年ごろから構成市町の議会などで議論があった。