奈良公園の観光拠点建物、県が県庁横に 文化庁、意匠案に景観配慮求める
観光バス駐車場や付属施設が整備される登大路観光自動車駐車場跡地を県庁屋上から見下ろす。事前の発掘を終え、地面がむき出しになっている。左奥は若草山=2014年11月、奈良市登大路町
登大路ターミナル付属施設の意匠案(観光バス駐車場の三方を囲んでいる手前の建物)。奥は県庁本庁舎、左側は県庁正面の大通り、国道369号。文化庁は景観にさらに配慮するよう求めている。
奈良県は、奈良市の国指定名勝奈良公園の一角に立つ県庁の敷地に観光バス駐車場を整備するのに伴い、付属施設として、国際会議室や展示室、土産物・飲食店、休憩室などを備えた複合施設を建設する。名勝の現状変更に許可権限を持つ文化庁は、県が示した建物の意匠案に対し、景観にさらに配慮するよう求めているという。
同敷地は庁舎東側に隣接する約1万平方メートルの土地で、これまで県営登大路観光自動車駐車場として使われてきた。計画では「登大路ターミナル」として整備し、観光バス駐車場のほか、パークアンドバスライドのシャトルバスや奈良公園周遊バスの発着場とする。
県庁は公園の玄関口に当たる場所にあることから、建設する付属施設は奈良公園の観光交流拠点とし、同公園を学習する展示などを行うという。県は外部に委託して2014年7月、登大路ターミナル付属施設基本計画策定業務報告書をまとめた。記者は情報公開制度に基づいて同報告書の開示を受けた。
報告書の検討案では、建物は観光バス駐車場をコの字形に囲むように配置される。東側は2階建てで国際会議室や展示室、ラウンジ、屋上庭園など、西側は3階建てで土産物や飲食の店舗、眺望デッキなど、南側は東西両棟を空中でつなぐ通路兼休憩スペースなどが設けられる。
壁面は建物内からの公園風景の眺望などを考えて、ガラス張りが多くなっている。
同所は文化財保護法の名勝のほか、都市計画法の市街化調整区域や県風致地区条例の風致地区などに指定されており、建物の容積率200%以下、高さ15メートル以下、建ぺい率40%以下、敷地の緑地率20%以上などの厳しい規制がある。
また、世界遺産「古都奈良の文化財」の資産を保護するため周囲に設けられた緩衝地帯に立地している。
建物はこうした条件を満たすように検討された。県は、文化庁との施設の景観デザイン協議に向け、パースを作成し提出した。これに対し、同庁から「景観面の宿題をもらっている。景観により配慮した観点を求められている」(県道路環境課)という。
着工に向けた実施設計の費用は14年度予算に計上されているが、同課によると執行は遅れているという。県は15年度予算に繰り越しできるよう手続きを行い、先の9月県議会で承認を受けた。
県庁敷地は名勝の内と外にまたがっている。県教育委員会文化財保存課によると、名勝指定(1922年)が県庁が建つ前だったためではないかという。登大路ターミナル予定地は半分以上が名勝の区域内になる。
県庁の正面は奈良公園の登大路園地。1965年完成の本庁舎は公園の景観に溶け込んでいると、文化財保存課は話す。名勝の内か外かに関わらず、県庁全体を公園の一部ととらえ、庁舎改築の際には景観への配慮がされているという。
県庁敷地での大規模な建物建設では、名勝の区域外になるが、1996年に本庁舎北側に完成した6階建ての分庁舎がある。