県議会への情報公開の不服申し立て、当事者の議会審査会が審議する仕組み改める
奈良県議会は情報公開制度の運用に当たり、議会に開示請求した人が不開示決定などを受けて行う不服申し立てについて、当事者である議会の内部の審査会が審議する仕組みを改める。審議の場として独自に設置していた県議会情報公開審査会を3月31日で廃止する。同審査会は主に議員で構成されるため、第三者性を確保できるのか疑問があった。4月1日から、議会への不服申し立ては、知事部局などと同様、外部の識者で構成される県の付属機関、県情報公開審査会に諮問する。
県情報公開条例では、情報公開の実施機関は不服申し立てがあると、県情報公開審査会に諮問し、その答申を尊重して開示・不開示を再決定する。現在の同審査会の構成は、弁護士や大学教授、元新聞社記者など5人。実施機関には知事のほか、県教育委員会や県公安委員会、県警察本部長などがある。
一方、県議会だけは県議会会議規則で、「議案の審査または議会の運営に関し協議または調整を行うための場」の一つとして、独自に県議会情報公開審査会の設置を定めている。現在の構成は、議長が各会派から指名した議員11人と弁護士や大学教授などの外部委員3人。
県議会はこの2月定例会で、県議会会議規則を改正、県議会情報公開審査会の運営について定めた「県議会の情報公開に関する規程」の廃止を決めた。
県議会が県情報公開条例の実施機関に加えられたのは2001年。議会事務局によると、当時は、議会に付属機関を置くことは地方自治法上、議事機関という議会の基本的な性格から予定されていないとの解釈に立ち、県情報公開審査会を議会の諮問機関と位置付けるのは困難と判断していた。
全国の都道府県でも議会を実施機関に加えるかどうかが検討されていた時期で、参考になる先行事例がなかったという。今回、あらためて調査したところ、大半が知事部局の審査会に諮問していることが分かったという。
不服申し立ての根拠となる行政不服審査法の改正(4月1日施行)で、処分に関与しない者による審理や、第三者機関による裁決の点検などが定められ、審議により公平性が求められるようになったことも踏まえたという。また、県民などからの指摘も多かったという。
県が公表している2001年度以降、2014年度までの県議会への開示請求は計95件。議会事務局によると、このうち不服申し立てがあったのは3件(2014年度)。いずれについても県議会情報公開審査会は、議会の決定を妥当と答申している。
県議会事務局の担当者は「より公平性のある県情報公開審査会に諮問する。県民からこれまで指摘されていた点も解消されるだろう」としている。
橿原市議会も審査会規則廃止
県内では、このほか橿原市議会が市議会情報公開審査会の設置を同審査会規則で定めているが、3月31日で規則を廃止する。今後、不服申し立てについては市長部局などと同様、外部の識者で構成される市情報公開審査会に諮問する。
「奈良情報公開を進める会」(神野武美代表)は、県議会に不服申し立てをしたことがある。同会は2014年、県議会議員の2013年度政務活動費の人件費について開示請求し、支出先の住所氏名が不開示だったことから不服申し立てをした。しかし、県議会は、県議会情報公開審査会の議会の決定は妥当とする答申を受けて、申し立てを棄却した。
神野代表は「県情報公開審査会への諮問は当然のこと。県議会情報公開審査会委員は、当事者そのものである県議会議員各会派の代表で構成され、全く第三者性を欠く。行政上の手続きにおいても適正な手続きの保障がなされることが判例上も確立されており、このような不適正な手続きは違憲・違法と考えてもおかしくない」と話している。 関連記事へ