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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

奈良地裁、照明のまぶしさ「受忍限度超えぬ」 生駒市グラウンドの夜間使用禁止求めた、住民の仮処分申し立て却下

夜間照明がついた生駒北スポーツセンターグラウンド。照明によって周辺の住宅建物が浮かび上がる。選手の掛け声も住宅地にこだましていた

夜間照明がついた生駒北スポーツセンターグラウンド。照明によって周辺の住宅建物が浮かび上がる。選手の掛け声も住宅地にこだましていた=2017年5月27日午後7時48分ごろ、生駒市高山町(撮影時の露出=絞り値:f/5.6、シャッタースピード:1/20秒、ISO感度設定:ISO3200)

 奈良県生駒市高山町の市施設、HOS(ホス)生駒北スポーツセンターで、2015年9月に始まったグラウンドの夜間使用に対し、地元住宅地「獅子ケ丘ハイマート」の住民5人が照明による光の害などで苦痛を受けているとして、市などを相手にグラウンドの夜間使用禁止を求めた仮処分申し立てに対し、奈良地裁(森川さつき裁判官)はこのほど、「受忍限度を超えるものとは認められない」として却下した。

 却下決定はことし4月11日付。住民は16年1月に仮処分を申し立てていた。

住民まぶしさ測定も、地裁「方法、適切でない」と認めず

 グラウンドの夜間照明が周辺住宅地にもたらす光の害については、事例が乏しく、住民側は、専門機関に依頼して、照明のまぶしさの程度を測定、数値で示し、JIS規格の照明基準に照らして、不快さは受忍限度を超えていると主張していた。これに対し、市側は、住民側が実施したまぶしさの測定方法が適切かどうか不明と反論していた。

 地裁は市側の主張を支持、却下の理由について、まぶしさの測定方法や測定値の評価方法が適切ではないとし、まぶしさの程度が強度であることを証明するものはないとした。地裁の判断は、測定方法の是非や測定値の解釈にとどまり、被害の実態にまで及ばなかった。

 仮処分申し立てで裁判所が双方の主張を聞く、審尋は非公開のため、「奈良の声」は住民側から双方の主張書面、同地裁の却下決定書の提供を受けた。

 住民側が夜間使用禁止を求めたグラウンドは、サッカーやラグビーに使われている。夜間照明は日没から午後9時までで、LEDの高出力型投光器が付いた照明装置が4塔立っている。仮処分申し立てで住民側は、強烈な光が自宅内に差し込み、夏場でも雨戸や窓、カーテンを閉め切らなければならない▽選手らの掛け声や出入りする車の騒音もある―と訴え、午後5時以降のグラウンド使用禁止を求めた。

 同施設周辺は市街化調整区域で、夜間はこれまで暗い環境が保たれていた。住民側は閑静で静謐(せいひつ)な環境を好んで居住してきたと主張した。

 住民側は照明による被害を立証するに当たって、市側が、照明はグラウンドの安全を保つための最小限の明るさに抑えており、住宅地での照度(照射面の明るさ)は街灯程度としたことから、照明が視界に入ったときのまぶしさを問題にした。

 それぞれの自宅から夜間照明を見たときのグレア(視野の中に他の部分〈夜間の暗い背景〉より著しく輝度の高い物体〈照明〉があることによって生じる不快感や見えにくさ)について、専門機関に測定を依頼。光源輝度、背景輝度、光源の大きさ、視線方向に対する光源の位置―の4つから算出されるグレア評価値を示した報告書を提出した。9つの測定箇所のうち2カ所について、JIS規格の「屋内作業場の照明基準」で、「ひどすぎると感じ始める」域に達しているとした。

 測定に当たっては、屋外のスポーツ照明器具を対象にしたグレア評価が確立していないため、屋内照明器具に適用されるグレアの計算方法が適用されたが、住民側は、屋外であっても同じ計算方法でグレアを推定することは妥当、とする専門機関の見解も提出した。

 しかし、地裁は、測定地点ごとのグレア評価値に高低の幅がある点などを挙げて、「屋内照明環境を対象とするグレア基準に当てはめることによって、グレアの程度を評価することは適切ではない」との判断を示した。

 このほか、住民側は、地方公共団体は率先して、環境省の光害対策ガイドラインに則った施策を行う義務があるのに、調査も実施しないまま夜間照明の運用を開始した、などと市を批判。また、市が照明の影響軽減を意図してグラウンドの一部に植栽を実施したり、交通への影響を指摘された箇所に遮光ネットを設置したりしたことに対しても、植栽については要望したことはなく、低減にも寄与していないと批判した。

 しかし、地裁は、施設は公共性を有し、照明はグラウンドの夜間使用のため必要であり、照明の直視を避け、カーテンを閉めることで影響を回避できるなどとする、市側の主張を支持した。

 仮処分を申し立てた住民の一人、井上光祥さん(獅子ケ丘自治会の2016年度スポーツセンター検討委員会委員長)は却下に対し、「主張の面では市よりこちらの方が理にかなっている。こちらの主張の文面を読めば、趣旨は分かってもらえると思っていた。裁判官は住民の受けている不利益をどこまで理解してくれたのか」と疑問を呈した。

 市教委スポーツ振興課の吉岡秀高課長は「住民の声に対しては、何もしないというわけではなく、話し合いはさせていただく。できる範囲で対応させていただく」とした。

 同スポーツセンターは、企業の福利厚生施設だった体育施設を市が買い取って、15年3月に開業した。グラウンドに新しく照明装置を設置して、夜間も利用できるようにした。施設運営は、市が指定管理者に選んだ民間業者が行っている。

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