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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子、浅野善一

視点)県が県営水道経営戦略案のパブコメ受け付け 県域水道一体化問題を考える

 奈良県は今後4年間の「県営水道経営戦略案」をまとめ、1月13日までパブリックコメントを受け付けている。県域水道一体化とどう関わるのか考えた。

 県営水道の課題は、2012年の包括外部監査において指摘されている。市町村から徴収する使用料の単価が他の都道府県と比べ高いと指摘され、経営努力が求められていた。5年後の2017年、県は市町村に対し、大滝ダム(国土交通省、川上村)を主水源とする県域水道一体化の方向性を示し、以来、関係28市町村に対し施設統廃合の利点を説き、参加を求めている。

 県の水道事業でパブリックコメントを実施するのは約2年ぶり。今回の経営戦略案は2025年までに、県営水道に100%依存する市町村は現在の13市町村から17市町村に広がると見通す。

 県水道局によると、大滝ダムを主水源とする県営御所浄水場の1日最大配水能力は33万8000トン。これに対し、1日平均配水量は約15万トン(2019年度)と約半分程度にとどまる。室生ダム(宇陀市)を水源とする県営桜井浄水場の1日最大配水量は10万2000トンであるの対し、1日平均配水量は約8万1350トン程度。水源にゆとりがあることが分かる。

 県営水道経営戦略案は、あり余るダムの水をこれまで以上に活用し、奈良盆地への導水を促進することを狙う。県が廃止を促しているのは、6市の計11カ所の浄水場だ。大和郡山市営昭和浄水場、生駒市営山崎浄水場、天理市営杣之内浄水場、桜井市営外山浄水場、葛城市営竹内浄水場などが該当する。実現すると、奈良盆地から市町村営の地下水浄水場が消える。県は、県営2浄水場のほか、布目ダムなどを水源とする奈良市営緑ケ丘浄水場は残す方針。

 ダム管理の在り方を巡っては、利水の貯水量が十分であればそれで良いということはない。政府は昨年12月、異常気象などに備えてダムが治水機能を十分に発揮するように、全国1級水系の全ダムに対し事前に放流することを奨励する策に転じた。

 今回の県営水道経営戦略案は触れていないが、水道や電力のために貯水するダムも事前放流を推進することを国は求めている。自治体の水道使用予定分などを豪雨に備え事前に流し過ぎてしまった場合は、国が補償すると公表している。かつては治水と利水の両面を持つ多目的ダムは有意義であると礼賛されてきたが、転換期を迎えたと言える。

 県営2浄水場の主水源である大滝ダム、室生ダムの主目的は洪水調節である。下流の安全のために極力、緊急放流を避け、事前放流を円滑に推進するためには、県民の利水分は、市町村の地下水浄水場やため池浄水場と共存していくことの方が防災上、ダムだけが水源となる県の一体化計画よりも理にかなうという考え方もできる。

 県のホームページなどでの意見募集のタイトルは「奈良県営水道経営戦略(案)について」。「県域水道一体化」の文字はない。案の冒頭の策定趣旨に「県営水道と市町村水道の一体化の実現を目指し、取り組みの方向性および施策を具体的に示した経営戦略を策定するもの」と書いているのだから、タイトルも一体化を前面に出すべきではないかと、「奈良の声」は県水道局に質問した。

 県水道局の担当者は「一体化は全体の一部。策定する経営戦略は2024年度までを対象としている。直近のここ数年の短期的な問題について解決する計画になる。一体化が先にあり、想定しているが、まず足元の問題解決が大切。県の水道資産の現況、現状を整理し、一体化するまでにどのような問題を解決すべきか県民の意見をうかがう」と答えた。

 案は一体化を見据えたものである。県民が一体化について意見を述べることができるせっかくの機会を見逃すことがないよう、募集タイトルには工夫を求めたい。 関連記事へ

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