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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

生駒市生活保護却下巡る訴訟 原告女性、国賠請求へ切り替え申し立て 市回答受け 扶養を要件誤りと認めず

生駒市の生活保護却下を巡る訴訟が行われている奈良地裁=2022年3月17日、奈良市登大路町

生駒市の生活保護却下を巡る訴訟が行われている奈良地裁=2022年3月17日、奈良市登大路町

 母親の扶養意思が確認されたことを理由に生活保護の申請を却下された50代の女性が奈良県生駒市を相手取り、却下処分の取り消しを求めた訴訟で、女性は17日までに、請求を国家賠償法に基づく損害賠償請求に切り替える申し立てを、奈良地裁(寺本佳子裁判長)に行った。女性の代理人弁護士が同日、明らかにした。

 市の却下処分に対しては、女性が提訴に先立って、取り消しを求めて県に審査請求し、県は提訴後の2021年12月、請求を認める裁決を行った。市がこれに従い女性の保護を開始したため、訴訟で請求していた却下処分取り消しの目的は達成された。

 女性側は今年1月20日の第2回口頭弁論で、市が扶養を要件に申請を却下したことを誤りと認めて謝罪すれば訴えを取り下げると述べていた。

 県の裁決は扶養が可能かどうかの調査が不十分だったとの判断だったが、女性側は訴訟で、扶養がないことを保護の要件として申請を却下した市の判断は、生活保護法に反して違法と主張。また、女性の母親は77歳で、謝罪を求める申し入れ書では、厚生労働省の通知が「扶養義務履行が期待できない者」として「おおむね70歳以上の高齢者」を例示していることを指摘した。

 記者が女性の支援者から提供を受けた市の今年2月18日付回答書は「扶養調査が生活保護法や諸通知に反しているとの主張は受け入れられない。70歳を超える方の中にも十分な資力、財産を持ち、扶養の意思も能力もある方もおられ、一律に扶養調査をしないまま保護の決定をすることは適切と考えていない」などと述べ、誤りを認めるものではなかった。

 17日は訴訟の第3回口頭弁論があった。女性側は損害賠償請求に当たって「違法な申請却下で原告は精神的苦痛を受けた」としており、この日の口頭弁論では、市側が損害賠償請求をするほどの違法性について主張するよう女性側に求めた。

 女性の代理人の古川雅朗弁護士によると、申し立てに対する地裁の判断は次回口頭弁論開催日の5月26日までに示されるとみられる。 関連記事へ

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