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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

生活保護却下取り消し請求訴訟弁論 原告「扶養ないこと要件誤り、認めて謝罪を」 県裁決受け生駒市に求める

 母親の扶養意思が確認されたことを理由に生活保護の申請を却下された女性が奈良県生駒市を相手取り、却下処分の取り消しを求めた訴訟の第2回口頭弁論が20日、奈良地裁(寺本佳子裁判長)であった。

 県がこの日までに市の却下処分を取り消す裁決を行い、市がこれに従って女性の保護を開始したことを受け、女性側は、市から申請却下の誤りを認める謝罪があれば訴えを取り下げる考えであることを明らかにした。

 県は昨年12月14日付の裁決で、市の却下処分取り消しの理由として、実際には女性と母親の同居がなかったことや市が母親の資力を調査していなかった点を挙げたが、女性側は訴訟で、扶養義務者の扶養がないことを保護の要件として申請を却下した市の判断は生活保護法に反して違法と主張している。

国家賠償請求訴訟への切り替え検討

 女性側代理人の古川雅朗弁護士は弁論で「保護は実現したが、県裁決の理由付けは本意でない。扶養(がないこと)は要件ではない。申請却下は違法で原告は精神的苦痛を受けた」と述べ、訴訟を国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟に切り替える申し立てを同地裁に行う考えであることを明らかにした。同時に市が誤りを認めて謝罪すれば訴えを取り下げるとした。

 これに対し市側の代理人弁護士は、文書で申し込んでほしいと求めた。

 閉廷後、古川弁護士は次回口頭弁論期日の3月17日までに市に対し、謝罪を求める申し入れを行うとした。一方、市側の弁護士は謝罪について「文書をもらわないと何も言えない」と話した。

 この問題では、1人暮らしをする50代の同女性が昨年4月に行った生活保護申請を、市は母親から扶養の意思を確認できたとして却下。女性はこれを不服として同年7月、県に審査請求したが、3カ月を経過して裁決が出なかったため、同年10月、訴訟に踏み切っていた。

 訴訟では、生活保護法の「扶養は保護に優先して行われる」の解釈を巡って、女性側は「扶養援助があった場合にその額が保護費から差し引かれることを意味するにすぎない」と主張。これに対し市側は「要件となる場合もある」と反論している。

 また、女性側は女性の母親が77歳で認知症を患う要介護2の状態で年金生活であることも挙げ、「母親の引き取りの意思は合理的な扶養の意思として取り扱えるものではない」と主張している。

 昨年2月26日付の厚生労働省事務連絡「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」には、「期待できない」例として「おおむね70歳以上の高齢者」が示されている。 続報へ

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