奈良県)都市公園法違反を問えず、住民の原告適格限定 県誘致の奈良公園高級宿泊施設 地裁判決、設置許可取り消し請求を棄却
判決後、記者会見する原告住民の辰野勇さん(左から2人目)と弁護団=2020年3月24日、奈良市の奈良弁護士会
奈良公園高畑町裁判所跡地に建設中の「ふふ奈良」=2020年3月24日、奈良市高畑町
奈良県が県立都市公園「奈良公園」(奈良市)の高畑町裁判所跡地に、富裕層を狙って誘致した高級宿泊施設「ふふ奈良」を巡って、辰野勇さんら近隣住民が県を相手取り、県の宿泊施設設置許可取り消しを求めた訴訟の判決言い渡しが24日、奈良地裁であった。島岡大雅裁判長は請求を棄却した。
島岡裁判長は、提訴した近隣住民の原告適格について、「災害時に避難場所として公園を利用する可能性が高いと認められる者は、施設の設置で生命、身体に侵害を受ける恐れがある」とし、設置許可の取り消しを求めることに関し、法律上の利益を有する者と認めた。しかし、原告側が請求の根拠とした都市公園法違反は主張はできないとした。
県は、同地で宿泊事業を行う民間業者をプロポーザル方式で公募。不動産会社のヒューリック(東京都中央区)を優先交渉権者として決定し、2019年2月、同社の宿泊施設設置申請を許可した。
都市公園法施行令は宿泊施設について、「特に必要があると認められる場合のほかこれを設けてはならない」と制限。実務上の指針となる国交省公園緑地・景観課監修の「都市公園法解説」は、例外が認められるのは、市街地から遠く、周辺に宿泊施設がないなど、公園を利用しにくい場合などに限られるとしている。奈良公園内や周辺にはすでに複数の宿泊施設がある。
原告住民は裁判で、高級宿泊施設が施行令の同規定などに違反すると指摘。高級宿泊施設の設置は、一般公衆の自由な利用という都市公園の目的に反すると主張した。
これに対し、島岡裁判長は同規定について、都市公園の自由利用の原則に照らし、行政庁に対し慎重な判断を求めたもので、災害時の住民の法律上の利益を保護する趣旨で設けられたものではないとして、同規定違反を理由に設置許可取り消しを主張することはできないとした。
弁護団は判決後、記者会見し、判決について「裁判所が都市公園に関し、近隣住民に原告適格を認めた例はとても少ない。原告は公園の近所の人ばかり。ここに逃げる可能性が高い。良い判断」と評価したものの、原告適格を限定し、主張できる範囲を制限したことに対しては「理解できない」と批判した。【関連記事へ】