水道黒字、手元に 一般会計への移動可決 大和郡山市議会 奈良県域一体化に備え
水道事業会計の剰余金処分の議案を賛成多数で可決した大和郡山市議会=2020年6月24日、同市役所
奈良県大和郡山市議会(定数20)は24日、市営水道の浄水場更新のために積み立ててきた水道事業会計の利益剰余金約28億円を、一般会計に繰り入れる議案を賛成多数で可決した。異なる会計間でこうした巨額な移動が行われるのは、戦後の市政施行以来初めて。背景には、県が進める県域水道一体化に伴う市町村水道資産の平準化見通しがある。一体化に参加すれば資産を引き渡すことになるため、その一部を手元に残す目的がある。
挙手による採決が行われ、共産(議席3)と維新(議席2)の5人が反対した。関本真樹議員(維新)は、一般会計補正予算案に盛り込まれた繰り入れ分を減額するよう求めて修正動議を出したが否決され、丸谷利一市議(同)は「移転は、公営企業の独立採算の精神に反する」と市の姿勢を批判した。
また、德野衆議員(共産)は「県水の一体化により市の自己水源(地下水)がなくなり、余剰のダム水が県民に押しつけられる」として、議論の出発点である県政の方向にも疑問を投げ掛けた。
一般会計に移動する利益剰余金の行き先として「都市基盤整備基金」の名目で取り扱うための市条例案も可決し、閉会した。
地方公営企業法施行令では、特定目的の積立金は議会の議決を経て目的以外に使用できる。市上下水道部によると、市水道事業会計の内部留保資金81億2800万円(2018年末)のうち、利益剰余金積立金が28億632万5000円あった。
1996年から20年以上にわたり、市は水道料金の値上げを行っていない。水道業務の管理職は「戦後の市の歴史から見ても、企業会計から一般会計へ、これほど多額な繰り入れがなされるのは大変珍しい」と話す。市財政課の話では、市の指定金融機関の口座に水道会計から現金が入る。【関連記事へ】