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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

県域水道一体化構想 県一般会計から146億円追加支援提案 料金引き下げ、奈良市参加の誘導策

市町村長や土屋直毅副知事らが出席した第5回県域水道一体化論点検討部会=2022年9月22日夜、奈良市三条大路1丁目の県コンベンションセンター

市町村長や土屋直毅副知事らが出席した第5回県域水道一体化論点検討部会=2022年9月22日夜、奈良市三条大路1丁目の県コンベンションセンター

 県域水道一体化構想に慎重な奈良市に参加を促すための県広域水道企業団設立準備協議会・第5回論点検討部会が21日夜、同市内で開かれ、9市町村長らが出席。県一般会計から支援金146億円を増額する提案があり、水道料金を下げる効果に言及、了承された。奈良市は都合がつかず、欠席した。

 ことし2月に同協議会で提案された県の支出金146億円と合せると10年間で292億円となる。総務省が定めた繰出し基準の満額に当たる。独立採算を原則とする公営企業の分野において自治体としては異例の高額の繰り出し金になる。人口減の予測で歳入規模の縮小が懸念される一般会計において、何を削って捻出するのか注目されそうだ。

 追加支援について、西野浩行・県水道局長は「老朽化した市町村の配水管更新を積極支援するもの」と説明し、追加支援が導く結果として、一体化企業団の水道料金が昨年12月の試算より下がるとした。

 2025年度設置目標の広域化企業団全体の年間投資額は、県の主張によると161億円。うち51億円が県営水道関係の投資となる。企業団が分かち合うことになるこの51億円が「大きい」と主張する奈良市は、現行の県営水道投資水準の25億円に下げた場合の差し引き26億円を県の一般会計から補完する一案を主張した。1億円の補完により水道料金は1立方メートル当たり0.7円下がるといわれる。

 この日の最終提案は、県が奈良市の主張を一部で認めたことになる。追加支援により、企業団は基盤強化のための工事負担額が10年間で146億円軽くなる見通し。

 一方、生駒市の小紫雅史市長(市議会のためリモート参加)は「論点検討部会が当初、議題としていた累積欠損金にまつわる課題、上下水道一体化の課題が取り上げられなくなった」と感想を述べた。

 累積欠損金問題は御所市や宇陀市など6市町村の水道事業で生じており、県の方針は、これら水道会計への一般会計からの繰り入れを停止させ、企業団が救済し、統合後も、これら市町村に対し一般会計からの繰り入れは求めない方針を打ち出し、奈良市は「本市や他市町村にデメリット」と主張。上下水道事業を巡っても奈良市は「一体運営し効率化を図ってきており、企業団でも継続して一体運営してもらわないと、本市にとってデメリットだ」と主張してきた。

 県の最終提案に対し、部会に出席した市町村長から賛辞が相次いだ。御所市の東川裕市長は「簡易水道を営む自治体が抱える課題についても県全体でフォーローしていくことが大事」と要望した。

 21日の論点検討部会を仲川げん奈良市長が欠席した理由について市企業局は「所用のため出席できず、今月上旬、協議会事務局に通知した」と話す。これに対し県水道局県域水道一体化準備室は「仲川市長は自ら要望した事項(県の支援額の上積みなど)の答えを早期に求めていたが、9月中は出席できないと言われた。会議を引き延ばすことは適当でないので、奈良市欠席のまま開催した」と説明する。

 県の追加支援案を盛り込んだ会議資料は、県水道局の担当者が21日夜、市秘書課に届けた。

 県主導の一体化最終案に対し、仲川市長は開会中の9月定例市議会の予算決算委員会の市長一括質疑で、何らかの具体的な発言をするとみられる。県側は、企業団設立に向けた基本協定案を提示する11月中に市の決定を求めている。

 県は2017年10月、緩やかな経営統合を公表したが、2020年8月に急転、統一料金による事業統合を目指すことに変更した。統合時期を2025年度としたことや、統合の効果額、料金試算などは、10年間の国庫補助金( 既報)の満額獲得を前提としたもの。 関連記事へ

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