奈良県域水道一体化 大和郡山市長 参加意思を表明 議会全員協議会で
荒井知事が存続を承認した大和郡山市営昭和浄水場=2019年11月7日、同市額田部北町
奈良県が主導する県域水道一体化構想に参加・不参加の方針を決めていなかった大和郡山市の上田清市長は5日、市議会の全員協議会で「前向きに参加を検討している」と明確な意思を表明した。
一体化を巡り同市と県は、資産の引き継ぎの在り方で対立していたが、奈良市が今年10月、不参加を表明した後、荒井正吾知事が態度を軟化。大和郡山市の意向である平準化に一定の理解を示し、全資産を持参する方針を撤回。水道事業会計に多額の現金や預金を持つ市町村は、優先的に地元の水道工事に使えるよう、一体化の協議会が基本計画案に盛り込んだ。
市上下水道部はこの日、一体化に参加した場合の資産の引き継ぎ見通しを市議会に説明した。それによると、市が2020年6月、一般会計に移転した28億円の内部留保資金は水道会計に戻すと、内部留保資金は約75億円になる。うち44億6000万円は、知事が存続を承認した昭和浄水場(水源・地下水)の更新に充て、残る16億円は市内の水道管更新に使える試算。大和郡山市内の年間管路更新率1.5%は県が保障するという。
上田市長は全員協議会で「議員の意見を聞きながら最終判断したい」と述べた。
奈良市が一体化の離脱を決める前は、県の方針は「参加する市町村はすべての資産を持ち寄り、全体最適化を目指す。資産の格差是正や引き継ぎにルールを作ってしまうと、部分最適化の論議に戻り、一体化のメリットを阻却する」とし、大半の市町村長が賛同していた。
水道に詳しい大和郡山市議は「奈良の声」の取材に対し「将来構想としての水道広域化は理解できるが、昭和浄水場の更新見積額はもっと精査が必要だ。市営北郡山浄水場(水源・地下水)も残す必要がある」と述べた。
県が廃止を求めているのは五つの市にある合わせて八つの市営浄水場(葛城市3、天理市2、生駒市1、大和郡山市1、桜井市1)。ゆとりある大滝ダム水の遠距離導水を奈良盆地に加速させる方針。
大和郡山市の公務員男性(50)は「奈良市が離脱しても、統一料金で一体化はスタートするので、得をする市町村、損をする市町村の構図は何も変わらないと思う。一体化の協議は負担の公平の在り方を論議していない。特に大和郡山市は水道料金が安く、経営も良いので、企業団が将来的な値上げを想定するとメリットが見えてこない」と話している。 関連記事へ