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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

平城宮跡公園、歴史体験学習館見送り 知事、前県政大型事業の査定結果発表 住民立ち退きすでに終了

住宅などの撤去がほぼ終了した歴史体験学習館の予定地=2023年6月12日、奈良市二条大路南3丁目

住宅などの撤去がほぼ終了した歴史体験学習館の予定地=2023年6月12日、奈良市二条大路南3丁目

 山下真奈良県知事は6月12日、5月の知事就任後、前県政の大型箱物事業などの見直しに向けて実施していた本年度予算執行査定の結果を発表した。知事が明らかにしていた対象27事業のうち19事業について、予算の全部または一部の執行を中止するとした。住宅地が丸ごと立ち退きの対象となった奈良市の平城宮跡歴史公園の歴史体験学習館は建設を見送った。

 全部中止と一部中止の内訳は、前者が「国民スポーツ大会などの開催に向けての検討」(橿原市など)など5事業、後者が「平城宮跡歴史公園の整備」(奈良市)など14事業。このほか、知事の指示で財政当局が独自に費用対効果などの点から検証した事業のうち10事業について、予算の全部または一部の執行を中止するとした。

 これにより本年度予算では73億5000万円の負担削減。将来の総事業費では約4730億円の負担削減が見込めるという。

歴史体験学習館の建設見送りについて説明する山下真知事=2023年6月12日、奈良県庁

歴史体験学習館の建設見送りについて説明する山下真知事=2023年6月12日、奈良県庁

 知事は検証を終えての感想について「事業の必要性や費用対効果、他の手法による代替可能性、県と民間の役割分担、そうした点の検討があまり緻密にされていない。計画自体に無理があるというものが少なからずあった」と述べた。

 その上で「(見直した事業を)すべて予定通り実施したら莫大なランニング・コスト(維持費)がかかったはず。そのお金は選挙で公約に挙げた教育や子育て支援、医療、福祉など県民の生活に直接関係のあるソフト事業を中心に使っていく」とした。

 知事は事業の一つ一つについて検証結果を説明した。平城宮跡歴史公園の歴史体験学習館の建設を見送ったことについては「(周辺には)すでに立派な建物が数多くあるが、あまり客が入っていないと言わざるを得ない。まず既存施設で集客の努力をした上で、それで施設が足りないのであれば建物の建設を考える」と述べた。

 奈良市二条大路南3丁目の約9000平方メートルの予定地には住宅地があり、戸建て住宅や集合住宅、棟割長屋のほか店舗や会社事務所が立っていた。自治会もあった。県平城宮跡事業推進室によると、用地買収の対象となった土地は30件で、これまでに29件の地権者との契約が済んでいるという。現在、建物の撤去はほぼ終了している。

 自治会は、県が用地買収に着手した2018年、県に提出した要望書で「自治会員には高齢者が多く、用地買収に伴う移転は精神的にも肉体的にも非常に大きな負担で、移転が体調を崩したり、命を縮めたりする要因にならないよう丁寧な対応を」と求めていた。住民は転居に不安を抱えながら立ち退きに応じた。「奈良の声」が自治会長を取材した2020年11月時点では、法人を含め20世帯が自治会に加入していた。

 歴史体験学習館は正面の建物を正倉院を模した外観にして、正倉院宝物の複製を見たり触れたりできる施設が検討されていた。

県事業の2023年度予算執行査定の結果

【全部中止】

アンカールート国道168号の整備
国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会開催に向けての検討
農地マネジメントの推進・特定農業振興ゾーンの整備
みつえ高原牧場の整備
文化観光推進・歴史体験~なら記紀・万葉プロジェクトの継続展開

【一部中止】

県コンベンションセンターを活用した観光振興
平城宮跡歴史公園の整備
自転車の周遊環境整備と安全利用
大規模広域防災拠点の整備
大和西大寺駅の高架化・近鉄奈良線の移設
リニア中央新幹線「奈良市付近駅」の早期確定と関西国際空港接続線
西和医療センターの移転・再整備の検討
まほろば健康パークの機能強化
県立工科大学の設置推進、奈良県立大学の教育充実
中央卸売市場の再整備
NAFIC教育の充実と周辺の整備
大和平野中央田園都市構想の推進
国際交流の強化・拡大と東アジア地方政府会合の充実発展
県庁版「良い人材が集まり、育つ」職場の実現

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