ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道


浅野善一

記者余話)市民の議会傍聴しやすく配慮いろいろ 奈良県内全12市の3月定例会を取材して

奈良県大和高田市議会の親子傍聴室。ガラス張りの手前は一般の傍聴席=2025年3月21日、同市大中の同市役所、浅野善一撮影

奈良県大和高田市議会の親子傍聴室。ガラス張りの手前は一般の傍聴席=2025年3月21日、同市大中の同市役所、浅野善一撮影

 「奈良の声」記者(筆者)は今年3月、奈良県内すべての市の議会定例会を傍聴した。「奈良の声」は少人数で取材活動をしているため、これまで傍聴の機会がなかった市議会もあった。地域の行政課題が議論される議会。市民の傍聴をしやすくするために、いろいろな配慮の仕方があることを知った。

 記者が傍聴したのは奈良、大和高田、大和郡山、天理、橿原、桜井、五條、御所、生駒、香芝、葛城、宇陀の12市の議会の主に一般質問。取り上げられたのは防災対策や小中学校の統廃合、子供の発達支援、下水道整備の遅れ、図書館の非正規職員の待遇など、市民生活に関わる身近な問題。議員が市側の考えをただした。

 議会傍聴をしやすくするための配慮で、新しさがあったのは大和高田市議会の親子傍聴室(3席)。子供連れの人でも、傍聴席の一角にある防音設計のガラス張りの部屋で、周囲に気遣いなく傍聴ができる。2021年4月の市庁舎建て替えを機に設けられた。12市では初の例。補聴器を必要とする人のための機器も設置された。

 同市議会では設備面だけでなく、傍聴者に配布される資料でもこまやかな配慮があった。発言をしているのが誰か分かる議席表(図面)は便利だった。席の配置図に議員や市長、市の各部長らの名前や職名が示されている。議会事務局によると職員のアイデアだという。メモを取る際の下敷き用にバインダーを貸し出してもいる。

 最近は、傍聴席にも議会中継のモニターが設置されていることがある。宇陀市議会では、議員が質問のため市側に示した資料を、傍聴席のモニターで見ることができた。奈良市議会の傍聴席のモニターの中継映像は字幕付きだった。同モニターは昨年12月、議場のマイクシステムを更新した際に設置された。議会事務局によると「市民により分かりやすく」との狙いがあったという。

 傍聴者への議案書の貸し出しは、五條市議会や大和郡山市議会など複数の議会で実施されていた。

 議会の取り組みではないが、天理市議会にも特徴があった。議員の一般質問の一つ一つに並河健市長自ら答弁していたことだ。市秘書広報課に聞くと、市長の考えとして「議会への敬意を払い、市の代表である市長または教育長、副市長が答弁する」ことにしているという。

 同課によると、前市長までは質問に関係する部局長が答弁することも多かったという。それは通常、ほかの議会ではよく見かける光景でもあった。市長が自らの声で考えを述べれば、市民の傍聴への関心を高める要素になりそうだ。

筆者情報

県内全12市議会が撮影許可 「奈良の声」3月定例会取材 記者クラブ非加盟問わず

左上から時計回りに奈良市議会定例会(2025年3月6日)、大和高田市議会定例会(3月21日)、天理市議会定例会(3月17日)、大和郡山市議会定例会(3月17日)=浅野善一撮影

読者の声