2市地下水浄水場の存廃に影響も 途中参加容認の知事方針に波紋 奈良県水道一体化
大和郡山市営水道の地下水をくみ上げる井戸。奥は大滝ダムを水源とする県営水道の受水タンク。地下水と県営水道の水を混ぜて水道水を供給している=2023年10月20日、同市額田部北町の昭和浄水場
奈良県域水道一体化の受け皿となる県広域水道企業団(一部事務組合)の設立準備に向け10月5日に開かれた第2回法定協議会で、山下真知事が「不参加市町村(奈良市、葛城市)の途中参加を認める方向で参加条件を整理する」と発言したことが関係市町村に波紋を広げている。存続が予定されている生駒、大和郡山両市の地下水浄水場の存廃に影響する可能性があるためだ。
一体化の当初案では、県営浄水場と奈良市緑ケ丘浄水場を主力とする一方で、廃止する6市11カ所の浄水場(水源=地下水、ダムなど)の更新費用が不要となる効果が見込まれた。加えて、国庫補助金を獲得することにより、累積赤字団体を含む27市町村の水道管などを強靱(きょうじん)にするとともに、事業開始時の統一料金を低く抑える計画だった。
特に奈良市緑ケ丘浄水場については、生駒市内に送水する案が示されていた。奈良市に有利な提案の中に、主水源の布目ダム下流河川と同浄水場をつなぐ導水トンネルを防災上もう1本造る大きな投資も構想された。
しかし、昨年10月の奈良市の不参加表明により、県北部の浄水場を存続する方向が検討され、大和郡山市昭和浄水場と生駒市真弓浄水場を残す構想が固まった。
一体化参加市町村のある水道担当者は、途中参加を認めた場合の影響について次のように語る。
「仮に奈良市が参加すると、水源をどうするのか。一体化計画は一から練り直す必要に迫られ、当初の地下水浄水場全廃案も再浮上するのでは。途中参加を認める方針が決まれば、10年先であれ、20年先のことであれ、浄水場の存廃に関する重大な論議を将来に引きずるような経営になるはずだ」
地下水などの浄水場を一部残したまま仮に奈良市が参加すると、投資規模が大きくなり、水道料金の試算も一からやり直しとなって価格は上昇する。
昭和浄水場の存続方針は、上田清・大和郡山市長が昨年12月、一体化に参加を表明する契機の一つになった。同浄水場は一日当たりの施設能力が3万200立方メートルで、県内市町村中、奈良市2浄水場に次ぐ3番目の規模。
県主導の一体化構想が市町村浄水場の積極的な廃止に強気の姿勢を貫いてきたのは、主要水源の大滝ダム(国土交通省、川上村)の貯水にゆとりがあるため。企業団設立の協議が始まった時点で、自己水の浄水場を廃止していたのは16市町村に上り、いずれも県営水道100%受水。
一体化構想は奈良盆地から遠い吉野川の大滝ダムからの長距離導水を特徴とし、県自ら身近な大和川水系で施工した県営2ダムについては、水道水に利用している天理市と桜井市の浄水場廃止に伴い、水道原水の供給機能がなくなる。
仲川げん奈良市長は山下知事の途中参加容認の方針表明後の10月10日、定例記者会見で「これからも単独でやっていく」と一体化には参加しない考えをあらためて示した。
県水道局県域水道一体化準備室は「途中参加を認める方針は決まっていない。決まれば、浄水場などの在り方について協議会またはその下部組織で協議する」と話す。 関連記事へ