操業終えたごみ処理施設建物を奈良県大淀町に譲与 南和広域衛生組合議会が可決承認 地元企業への跡地売却に向け
南和広域衛生組合議会定例会で、ごみ処理施設建物の大淀町への譲与に賛成し起立する議員=2024年2月22日、同町役場
奈良県吉野郡内の4町村でつくる南和広域衛生組合(管理者・辻本眞宏大淀町長)の議会定例会が2月22日、同町役場であり、昨年9月で操業を終えた同町芦原の組合ごみ処理施設「南和広域美化センター」の建物を同町に譲与する議案が賛成多数で可決、承認された。
敷地の大半は大淀町の所有で、組合が賃借していた。同町は、敷地と譲与を受けた建物を随意契約で地元企業の徳本砕石工業(同町芦原)に売却する方針を決定しており、3月1日に始まる町議会定例会に売却の承認を求める議案を提出する。ただ、町議会には、跡地の利用が特定の企業への売却を前提に進められていることについて問題視する議員もいる。
組合議会は同町、下市町、黒滝村、天川村の各議会から選出された議員で構成され定数10人。この日は全議員が出席した。組合の提案説明によると、大淀町に譲与するのは焼却炉棟を除く、管理棟、リサイクル棟、車庫・倉庫棟の3施設で、評価額は合わせて2750万円。組合は、施設の一部を譲与することで解体経費の削減を図れるとした。
これに対し、大淀町の岡向正道議員(共産)は、管理棟が立っている土地の一部が民有地で、この民有地が昨年1月、元の所有者から徳本砕石工業に転売されたことについて質問。組合がこの転売を承諾する際、議会に情報提供がなかったことなどを批判した。
この転売を巡っては、公有地である跡地の売却に当たり通常の一般競争入札を選択しない理由にも関わっており、管理者の辻本大淀町長は昨年9月の同町議会全員協議会で「敷地の一部は徳本砕石工業が取得済みで、残りは不成形な土地。(一般競争入札による)落札の見込みがない」と説明している。
採決では、岡向議員が反対討論で「特定の企業への売却ありきで納得できない」などと訴えたが、採決に参加しない議長を除く9人のうち6人が議案に賛成した。反対したのは岡向議員ら大淀町議会の2人と下市町議会の1人。
大淀町によると、徳本砕石工業への跡地売却を巡っては、2022年3月ごろに同社から組合に対し、管理棟や車庫の売却を希望する相談があったという。一方、組合は、芦原区との間で交わしている公正証書に基づき、操業終了後は施設を全て撤去する義務を負っていた。
同社は芦原区に跡地の利用を申し入れ、これを受けて同区は同年12月、町と組合に対し、焼却炉棟などを除く施設を地域に根差した地元企業の同社に利用させ、地域振興や地元活性化につなげてほしいとする願い出書を提出している。
組合によると、施設の全てを撤去した場合の費用は約9億2500万円。これに対し、再利用しない焼却炉棟のみを撤去した場合は7億3700万円で、約1億8000万円安くなる。撤去費用は、組合を構成する4町村と途中で脱退した高取町がごみの持ち込み量などに応じて分担。大淀町は最も多い約53%を負担する。
同センターは1993年から操業していた。 徳本砕石工業は、跡地に本社事務の機能を移し、建物は会社の事務所、倉庫、車庫として使うとしている。 関連記事へ