奈良市役所入り口の名称無表示 ユニバーサルデザインの考え方生かされず 市マスタープランに「分かりやすさ」
通りから望む奈良市役所の正面。入り口に市役所の表示がない。右は整備された芝生広場=2024年7月5日、同市二条大路南1丁目
奈良市役所入り口にあった市役所の表示が、庁舎前の芝生広場整備に伴い、なくなった問題。市は2020年、バリアフリーのまちづくりの基本計画となる市ユニバーサルデザインマスタープランを策定している。しかし、今回の問題では、ユニバーサルデザインの原則にある「分かりやすさ」などの考え方は生かされなかった。市交通バリアフリー推進課は取材に対し「どなたにも市役所とはっきり分かるようにとの意見はその通りだと思う」と述べた。
ユニバーサルデザインは、すべての人が使いやすいように建物や製品をデザインすること。同マスタープランが目指すのは「高齢者や障害者、妊産婦、子育て世代、けが人などが、分け隔てなく社会参加をすることができる環境づくり」など。その実現に向けて示した「奈良市の目指す姿と指針」の中で、「ユニバーサルデザインの7つの原則によるまちづくり」を掲げている。
七つの原則それぞれについて考え方を紹介していて、そのうち「公平性」は「だれにとっても利用できるように作られていること」、「簡単さ」は「だれにとっても簡単で利用者に分かるように作られていること」、「明確さ」は「だれにとっても必要な情報が効果的に伝わるように作られていること」としている。
市交通バリアフリー推進課長補佐によると、広場の整備に当たっては点字ブロックの配置などについて、整備担当の市資産管理課から相談があり対応したという。一方、市役所入り口の表示がなくなったことに対しては「ここに市役所があって当たり前という感覚になっていて、考えが及んでいなかった」という。その上で表示の必要性について「あった方が市への転入者など初めて訪れた人に分かりやすい」と述べた。今後、表示をどうするかについては資産管理課とも話をするとした。
広場整備は、庁舎前の庭を気軽に立ち寄れる開放的な空間に変えることを狙いとして行われた。これに伴い「奈良市庁」の銘板をはめ込んだ石積みの門が撤去された。市資産管理課によると、これに変わる表示については当初、看板やオブジェも検討したが、開放的空間という狙いとの兼ね合いもあって、現在に至っているという。広場は6月1日に利用が始まっている。