奈良県安堵町に補助金221万円返還命じる 廃棄物排出組合への違法支出問題 県、過去分さかのぼり
安堵町役場=2024年3月、同町東安堵、浅野善一撮影
奈良県安堵町が町同和地区産業廃棄物処理組合に2020年度に交付した補助金が住民訴訟の判決で違法な支出とされ、町がこの補助金のうち県費分24万円を県に返還したのをきっかけに、県がこれ以前についても町に実態の確認を求めていた問題で、県が2014年度にさかのぼって県費分計221万5000円の補助金を取り消し、町に返還を命じていることが10月31日分かった。県によると、町は県に対し廃棄物の処理量の実績について推測値を報告していた。
県からの補助金は県産業廃棄物処理事業県費補助金交付要綱に基づいている。県廃棄物対策課によると、県が町に返還を命じているのは2014~2020年度の7カ年度分で2014年度が33万6000円、2015年度が31万9000円、2016~2019年度が各36万円、2020年度が12万円(総額は36万円だが24万円は返還済み)。10月22日付で町に対し、同補助金を取り消すとともに合計額221万5000円の返還を命じる通知を送った。返還の期限を11月11日としている。
町からは10月10日付で書面で実態確認の報告があったという。それによると、町は過去から県への補助金申請の際、根拠となる廃棄物の処理量の実績について推測値を報告していたという。実際の数字は不明で、あらためて根拠に基づいた実績報告を行うのは極めて困難と説明しているという。
返還を命じた期間が2014年度以降となったのは、町に補助金を交付していたことを示す文書や電子の記録で、県が保有している最も古いものが2014年度だったためという。
町から組合に交付した補助金の総額は2020年度で県費分を含め325万800円。住民訴訟では、このうち8~3月の8カ月分216万7200円について廃棄物処理の事実が確認できないとして違法な支出とされ、西本安博町長個人が町に対し賠償している。今回の町からの報告では残る4~7月の4カ月分についても根拠がなかったことになる。
県が返還を命じた期間の組合への補助金の総額は少なくとも2019、2018年度がいずれも361万2000円だった。こうしたことから7カ年度にわたって同規模の補助金が組合に交付されていた一方で、交付の根拠となる廃棄物の実際の処理量は不明だったことになる。
県廃棄物対策課の課長補佐は「奈良の声」の取材に対し「事実確認をできる範囲で返還を請求している。しかるべく対処した」と話した。
町議会では11月1日午前10時から臨時議会が予定されている。同問題を巡っては組合の誰が補助金を申請し、受け取っていたのか判然としていない。
住民訴訟の原告だった町住民の池田忠春さんは「県から補助金返還を命じられる期間がさらに大きくさかのぼり驚いた。これは犯罪に値するのではないか。実際に金を受け取った人物は明らかになっていないが、町は返還を請求すべきだ」と話した。
町同和地区産業廃棄物処理組合は、合成皮革などの廃棄物を排出する靴工場などの町内事業者が排出物の収集・運搬を専門業者に委託するため、1989年に設立した。一方、町は同年、同和対策支援事業として産業廃棄物排出業者補助金交付要綱を定め、組合員が廃棄物の処理を業者に委託するための経費の一部を補助してきた。