JR平城山駅の日時計モニュメント、出入りに難点 「広場」に見えても道路区域 奈良市設置も「歩行者立ち入る場所でない」
JR平城山駅ロータリーに奈良市が設置した日時計のモニュメント=2025年8月28日、同市佐保台西町、浅野善一撮影
奈良市が32年前、同市佐保台西町のJR平城山駅ロータリーに設置した日時計のモニュメントは、開放的な「広場」に見えるのに出入りに難点がある。市は「道路区域内であり、歩行者が立ち入るための場所ではない」と説明する。しかし、そこに入らなければモニュメントを間近に鑑賞することはできず、日時計が捉える太陽の動きも分からない。市は矛盾のある場所にモニュメントを設置していた。
「奈良の声」記者は、このほど行われた日時計の修復工事の取材の過程でモニュメントへの出入りに難点があることに気付いた。市土木管理課に問い合わせると、「日時計は道路の一部で道路に囲まれているため、安全確保の点から、日時計への誘導の計画はない」との回答だった。
モニュメントはロータリー中央の道路に囲まれた区域の一角にある。1985年に開業した同駅を中心とした地区で進められた市の土地区画整理事業でロータリーが整備され、1993年5月、同事業の完了を記念して設置された。
モニュメントを中心とした「広場」の面積は地図上で計測すると600平方メートル弱。日時計は、直径約17メートルの円形に区画された部分の真ん中に、時計の針となる石柱が立ち、その根元に時刻を表す干支(えと)の文字を刻んだ文字盤がある。
石柱の縦の中心軸に沿って隙間があって、そこから差し込んだ太陽の光が文字盤の干支の文字を照らす仕組みになっている。春分・秋分に日が最も高くなったときの石柱の影の位置も、文字盤に刻まれている。外周には方角を示す十二支の動物の彫刻が並んでいる。
日時計の説明文を刻んだ銘板=2025年8月28日、奈良市佐保台西町のJR平城山駅ロータリー、浅野善一撮影
市内の彫刻家・栄利秋さんが「宇宙 天と地と太陽」をテーマに制作したもので、日時計の脇には栄さんによる作品の説明文を刻んだ銘板がある。どれも中に入らないと確かめられない。日時計正面の地面もタイル張りで、「広場」の雰囲気をつくり出している。
しかし、ロータリーの中央にあるモニュメントに行くには道路を横切らなくてはならず、危険が伴う。加えて、ロータリー中央の区域は、モニュメントの「広場」の正面にバス、タクシーの待機場所という配置になっていて、この待機場所も通り抜けなくてならない。
仮設のガードレールでふさがれたバス、タクシーの待機場所(左側)の開口部。奥にモニュメントが見える=2025年8月28日、奈良市佐保台西町のJR平城山駅ロータリー、浅野善一撮影
さらに、市土木管理課によると、現時点ではバスやタクシーの利用が多くないことから、違法駐車や事故を防ぐため、待機場所の開口部は仮設のガードレールでふさがれている。
ロータリーの構造に問題があるのではないか。取材に対し市土木管理課は「日時計は、市が近畿地区から美術家を募り、奈良北地区土地区画整理事業のシンボルモニュメントとして制作された。駅側からご覧になるデザインであるとともに、道路区域内に設置していることから、いわゆる広場ではなく、歩行者が立ち入るための場所ではない」と答えた。
また、「ガードレールが置かれている部分はバス、タクシーが待機する場所として土地区画整理事業で整備された。こちらもまた道路区域内であることから、歩行者が立ち入るための場所ではない」とし、「『構造上の問題』はないと考えている」と答えた。(記事の末尾に回答全文)
実際にはモニュメントへの人の出入りがある。市道路維持課によると、修復工事に当たっては、日時計内のタイルの一部がはがれるなどしていたことから、地元の地区自治連合会からつまずくなどの危険性があるとして対策を求める要望が出ていたという。
工事は今年6月に完了した。タイルを撤去してアスファルト舗装を行った。タイルは耐久性が良くない一方で、施工には莫大な費用がかかるためという。今回の工事費は約435万円だった。
奈良市土木管理課の回答全文(電子メール)
ロータリー内の日時計は、市が近畿地区から美術家を募り、奈良北地区土地区画整理事業のシンボルモニュメントとして制作されました。日時計は、JR平城山駅東側からご覧になるデザインであるとともに、道路区域内に設置していることから、いわゆる広場ではなく、歩行者が立ち入るための場所ではありません。
また、ガードレールが置かれている部分はバス・タクシーが待機する場所として、上記土地区画整理事業で整備されました。現時点ではバスやタクシーの利用が多くないことから、違法駐車や事故を防止するために仮設でガードレールを設置していますが、こちらもまた道路区域内であることから、歩行者が立ち入るための場所ではありません。
以上より、ご指摘の「構造上の問題」はないと考えています。
筆者情報
- 浅野善一
- 電話 090-7767-8403
- メール asano-zenichi@voiceofnara.jp
- ツイッター @asano_zenichi