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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良県)奈良市、生活保護・通院交通費の公開質問状に回答 申請却下の男性側、内容に不満

 奈良市が市内の生活保護利用者の男性に対し、通院交通費を5年前にさかのぼって支給すると通知しながら、その後一転して申請を却下した問題で、男性の代理人弁護士が市に提出した公開質問状に対する回答が12日までにあった。

 男性は同市の橋本重之さん(80)。質問状は6点について回答を求めていた。このうち、市が却下の理由で遡及(そきゅう)支給できる期間は2カ月と限定した根拠を問う質問には、生活保護法の趣旨と運用を勘案すると、生活保護の扶助費は直接的な生活困窮に対して給付されるものである▽行政処分の不服申し立て期間が一般に60日とされている―と回答した。

 市が橋本さんに対しいったん支給を約束しながら、後にほごにした理由を問う質問には、厚生労働省の2010年3月12日発出の事務連絡文書から遡及可能と判断したが、その後、同省担当部署に確認したところ、2カ月を超えることはできないとの回答を得たため、と回答した。

 また、橋本さんは市による制度の周知不足で申請ができなかったにもかかわらず、責任を生活保護利用者の不利益に転嫁することの正当性を問う質問には、制度の周知はケースワーカー(市職員)による口頭での説明で一定程度なされていた、と回答した。

 回答は、それまでの交渉で市が橋本さん側に説明していた内容を越えるものではなく、橋本さん側は回答を不満として、再度、質問状を提出することを検討している。

 【厚生労働省の2010年3月12日発出の事務連絡文書】通院交通費をめぐっては07年、北海道で不正受給事件が発覚。厚労省はこれを受け、08年4月、支給基準に「へき地」や「高額」の条件を設けるなどした。しかし、認められるべき交通費が支給されなくなったと批判が出たため、同省は基準からこうした条件をなくすなどし、10年3月、あらためて都道府県などに通知した。

 このため、同通知に伴う事務連絡では、通院交通費が支給の対象であることを文書で利用者に周知するよう求め、支給基準を改めた08年4月から文書による周知が行われるまでの間に生じた交通費については、事後申請による支給を認めても差し支えないとした。

 奈良市は最近まで文書を作成しておらず、生活保護利用者に配布したのは昨年10月だった。

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