河合町議員の沖縄視察費めぐる訴訟 地裁、町民の返還請求を棄却 公費支出の在り方、踏み込まず
奈良県河合町議会の議長ら議員3人が議会の視察研修費で沖縄県石垣市の津波対策などを視察したことに対し、内陸の町に必要のない支出であり、公務に名を借りた観光旅行だったとして、町民が岡井康徳町長を相手取り、町が支出した視察費30万円を議員に返還させるよう求めた住民訴訟の判決言い渡しが31日、奈良地裁であった。
木太伸広裁判長は「旅行の目的や態様に照らせば、公務に該当するものと認められる」として、町民の請求を棄却した。
原告の高桑次郎さん(75)は「町が提出した視察費の領収書は、公金支出に見合う証拠としては不適切な所が数カ所あるが、判決ではそれが考慮されていない。判決は極めて一方的で不当だ」と反発した。
判決によると、議員3人は2014年9月、2泊3日で石垣市を訪問。費用の合計31万820円のうち、議員の公務のための旅費の上限を1人当たり年10万円とする町の内規により、計30万円の支給を受けた。
原告は、海に面していない町の議員が防災対策の研修と称し、電柱への海抜表示や防波堤の視察を公務としてする必要はないと述べた。近隣の王寺町で1982年の大和川氾濫体験に基づく水害対策を学ぶことができ、遠方の石垣市まで旅行する必要はないとした。報告書に視察研修の事実を証明する領収書などの添付もなく、旅費の支給は違法と主張していた。
これに対し被告の町は、台風など自然災害が多く、市民の防災意識も高いとされる石垣市を視察し、町政に生かすことを目的として旅行を実施。同市議らから、災害時の緊急放送システム、自主防災会の設立、物資提供ルート確保のための他団体との連携などについて説明を受けたとした。旅行は町民の利益を図るため実施され、費用も法令に則った処理がされたと主張していた。
判決は町の主張に沿ったものになった。旅行が視察の体裁を整えていれば、公務に該当するとの判断になった。遠く石垣市まで行く必要があったのかなど、公費支出の在り方には踏み込まなかった。また、領収書の添付がないことなどについては「結論を左右するものではない」とした。