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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

必要ない鑑定拘束に補償ゼロ 傷害事件の知的、発達障害男性 医療観察法収容の国賠訴訟で訴え

 【視点】傷害などの他害行為に及び、不起訴や無罪になった精神障害者を収容して強制治療を行う医療観察法(法務省、厚生労働省共管)を巡り、必要のない鑑定入院を強いられたとして、40歳代の男性が国に賠償を求めた訴訟の控訴審が26日、東京高裁(近藤昌昭裁判長)で始まり、即日結審した。判決は10月16日に言い渡される。

 男性は、傷害の容疑で検挙された後、検察官が不起訴処分にし、医療観察法の申し立てをした。同法に基づく精神鑑定の結果、知的障害および発達障害と診断され、釈放(地裁の不処遇決定)された。これら障害は、薬物療法に反応しにくいとされ、医療の提供を原則とする観察法処遇(入院、通院)の対象には本来ならない。

 精神鑑定の命令を受け、東京都三鷹市内の精神科病院に男性が身柄を拘束されていたのは58日間。このうち10日間は、鑑定が終了した後の日数であり、同じ病棟に留め置かれていた。国側は「医療観察法の地裁審判に待機するため」と釈明したことが、一審(原告敗訴)で明らかになっている。

 通常の刑事事件では、無罪になった人に対する補償があるが、医療観察法は、憲法が禁止している正当な理由のない拘禁などに対し、当事者の不利益を救済する制度はない。

 男性に対し、検察官が医療観察法の申し立てをしたのは2013年だった。事件の処理を理由に、検挙から2年が経過している。男性の弁護団、「医療扶助・人権ネットワーク」事務局長の内田明弁護士は「事件発生から2年も経過しているが、法律に年限が明記されていないことを理由に一審判決は容認した。事件後に何年を経ても無期限に強制治療が運用されていく恐れがある」と閉廷後、男性を支援する傍聴者に解説した。

医療観察法は2005年の施行。それまで刑事責任を問われない触法精神障害者の処遇として、精神保健福祉法に基づく措置入院(知事・政令市長の行政処分)があるが、大阪教育大付属池田小事件を機に、収容を強化する意見が国会の多数を占め、新法ができた。現在、奈良県大和郡山市小泉町の国立精神科病院など全国33の専用病棟に723人が入院し、法律上収容の対象にならない知的障害の当事者が9人、発達障害は17人(本年4月、厚労省調べ)に上っている。

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