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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

県域水道一体化 水源ダムの将来コスト 水道料金試算への反映乏しく

奈良県域水道一体化計画の水源となる7つのダム

 奈良県が2025年度の事業開始を目指す県域水道一体化計画の財政シミュレーションで行った水道料金の試算に、水源となる7つのダムが将来、老朽化することによって新たに発生する維持管理費や、ダム湖で増え続ける堆砂の対策費用が、ほとんど反映されていないことが県や国への取材で分かった。

県域水道一体化計画の水源となるダムの管理負担金(2019年度)
堆砂率は100年計画堆砂量に対する比率
ダム(水系) 年間の管理負担金(支払先) 完成 堆砂率
大滝ダム(紀の川) 1億2218万円(国土交通省) 2013年 78.8%
室生ダム(淀川) 1億5253万円(水資源機構) 1974年 38.15%
布目ダム(淀川) 2億7677万円(水資源機構) 1992年 35.26%
比奈知ダム(淀川) 1億5879万円(水資源機構) 1999年 49.63%
大迫ダム(紀の川) 1億1318万円(農林水産省)
2ダムの合計額
1973年 274.38%
津風呂ダム(紀の川) 1961年 92.19%
国交省「紀の川ダム維持管理費電気事業者等負担金徴収内訳」「ダム堆砂台帳」、農水省近畿農政局「ダムの堆砂状況」、水資源機構法に基づく県への負担金通知などを基に「奈良の声」が作成

 県が行った2048年までの財政シミュレーションでは、一体化参加予定の28市町村が単独で水道事業を続けるより事業を統合した方が、水道料金の上昇を抑制できるとされる。県は、市町村の11浄水場(地下水、ため池など)を廃止して送配水施設を合理化し、国の広域化奨励交付金を得ることなどを加味して水道料金を算定、その根拠としてしている。 

 試算の水源はすべてダム(大滝、室生、布目、比奈知、大迫、津風呂、須川の7ダム)だ。老朽化ダムの課題を検証している岡山県土木部によると、運転開始後から30年ほどが過ぎると、機械設備などの故障や補修が増加する傾向にあり、維持管理費用が増大することが予想されるという。

 県の一体化試算が目標年とする27年後には、水源の津風呂ダムは築86年、室生ダムは築74年を迎える。

 現在、須川ダムを除く6つのダムに対し、県や奈良市が支払う年間の管理負担金の合計は約8億円(2019年度)。堤体維持など総管理費の1~3割ほどの請求が国などから毎年来る。この金額が県の一体化試算ではどう推移していくかの知ろうと、記者は県情報公開条例に基づき県の財政シミュレーションを開示請求した。

 開示されたものは、個々のダムごとの管理負担金の想定推移は記載していない。営業費用の中の「原水および浄水費」に算入したという。この費目の27年後の2048年の数字は、現在の2021年時点の数字と比べると、わずかに下がっていた。

 取材に対し、県水道局業務課の県域水道一体化推進係は「今後のダム負担額は、財産管理者が行う当該年度の施設管理事業費を元に算定されるため、現時点において明確な算出はできない。このため一体化の財政シミュレーションは、2018年度の実績を基に2048年度まで、毎年6億円程度の負担金(布目、比奈知ダムの負担金を除く)を見込んでいる」と説明する。

 一体化の県広域水道企業団が今後、仮に新規に建設されるダムに水利権を求めれば、新たな負担金が発生する。県は大滝ダムに606億円、奈良市は布目、比奈知の両ダムに計600億円近くを支払った。大滝ダムで県が国に支払った606億円のうち、水道事業用の利水分は370億円。うち半分は国庫補助、残る半分は県の一般会計から支出した100億円と、県水道局が1972年度から2012年度にかけ発行した企業債91億円を充てた。

 この間、大滝ダムの試験貯水中に地滑りが発生し、対策工事費の一部を県水道局が支払った。安全対策を国が怠ったことは大阪高裁が認定したにもかかわらず、対策工事の一部を自治体が負担していた。今後、このような転嫁があれば、県域水道一体化を構成する市町村の理解を得るのは難しくなるだろう。

堆砂量上昇のシミュレーションなし

 県の構想によると、一体化の水源はすべてダムになる。県の財政シミュレーションは、ダム湖につきものの堆砂の対策費用(しゅんせつ、掘削など)がコストの上昇とどう関わってくるのか、そうした試算はしていない。

 水資源機構が開示した「ダム堆砂台帳」によると、完成から22年の比較的新しい奈良市の水源、比奈知ダム(三重県名張市、淀川水系名張川)は、堆砂率が49.63%。この堆砂率は、100年間を想定した計画堆砂量(死水容量)に対し、現在の堆砂の占める比率を示す。比奈知ダムは、奈良県の県域水道一体化計画の水源の1つ。完成以来、堆砂率が年々上昇していく様が台帳から分かる。

 一体化の水源予定のダムのうち、現在の堆砂量は、紀の川水系のダムが大きい。最上流部に当たる紀の川源流、吉野川に1973年、築造された大迫ダムの2019年度の堆砂量は288万1000立方メートル。これはダム運転後100年間の計画堆砂量105万立方メートルの3倍近い。吉野川分水の農業専用ダムで、貯水の一部を県営水道に使用している。

 農林水産省近畿農政局は大迫ダムの堆砂について「湖面からの測量により、死水容量内に計画堆砂量の75%にあたる堆砂を確認した。奈良県の農業に影響はないが、ダム背水位の上昇による浸水を防ぐなどの堆砂対策は今後とも重要。県営水道は土地改良財産の他目的使用料として費用負担を払い、この負担額は、大迫ダムにおける堆砂対策費用も含めた管理費をもとに算定している」と話す。

 すぐ下流の大滝ダムは完成して18年、稼働して8年だが、堆砂量はすでに計画堆砂量の8割に近い630万立方メートルに上る。

 上水道の水源はダムや地下水それぞれ長短があるが、県は熟議なしに市町村営11浄水場(地下水、ため池など)の廃止を促している。ダムや水道の専門家らが一体化について検証する中立的な第三者機関の審議会について県水道局は「開催は未定」と話す。 関連記事へ

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