強制執行申し立て直ちには行わず 奈良県営住宅、連帯保証人巡る訴訟で明け渡し命じる判決確定
夫婦で入居していた奈良県営住宅(奈良市内)の名義を、離婚後、退去した元夫から自身に変更しようとした女性が連帯保証人を見つけられず、入居承継の手続きができないまま、県から住宅明け渡しを求められた訴訟で、女性に明け渡しを命じた奈良地裁の一審判決を支持した、大阪高裁の控訴審判決が17日までに確定したことが分かった。
女性(61)の代理人弁護士(現在は辞任)によると、女性側は、ことし5月21日付の大阪高裁判決を受けて、同高裁に最高裁への上告状を提出したが、女性本人が上告状に必要な印紙代1万8000円を支払わなかったため、上告は8月18日付で却下され、1週間後、判決が確定した。
奈良地裁の一審判決は女性に対し、住宅の明け渡しと、県が2018年6月に賃貸契約を解除したときから明け渡しをするまでの期間の賃料相当損害金月当たり5万3400円の支払いを命じている。
県は判決の確定を受けて、明け渡しに向けた対応を取ることになるが、裁判所への強制執行の申し立てについては「最終的な最後の手段」として、直ちには行わない考え。県住まいまちづくり課の高木悟課長補佐は「奈良の声」の取材に対し、「生活を壊してまで強制的に追い出せない。自主的に出てもらうのが理想。本人と話をし、生活をどうするか気を使って進める」と話した。福祉的な制度の利用も視野に転居を促していく。
県営住宅の入居者に対する連帯保証人要件を巡っては改善が進んでいる。2018年3月の県営住宅条例改正で、生活保護の利用者やDV(配偶者からの暴力)被害者、障害者、高齢者などを対象に、連帯保証人を免除できるようにした。女性の入居承継が生じた2017年には、連帯保証人免除の規定はなかった。
免除に当たっては「2親等内の親族がいない者」との条件を設けているが、これについても、県はことし3月の県議会建設委員会で、親族がいても連帯保証人を依頼できない場合、個別の事情に応じて丁寧に対応していきたいと表明した。また、再度の条例改正により、4月からは国に登録している家賃債務保証業者の利用を認めている。