【詳報】奈良県香芝市議会 議員の出席停止処分、仮差し止めで断念 陳謝文朗読に変更し可決
定例会終了後、代理人弁護士と共に会見する青木恒子香芝市議会議員(中央)=2022年9月30日、奈良市の奈良弁護士会
奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産党)が常任委員会での発言( 詳細)を巡って懲罰動議を提出されていた問題で、議会は定例会最終日の9月29日、奈良地裁から仮の差し止めを命じられた出席停止処分の議決を断念、懲罰の内容を同処分より軽い陳謝文朗読に変更して可決した。青木議員は朗読を拒否した。
この日は、本会議の開会前に市議会懲罰特別委員会(中谷一輝委員長、6人)が開かれ、青木議員に対する懲罰について再審査した。審査は秘密会で行われた。同委員会は8月18日、出席停止8日間の処分を決定したが、青木議員の申し立てを受けた地裁が9月1日付で仮の差し止めを決定。議会は定例会初日の9月5日の議決を見送っていた。
懲罰賛成議員「司法の介入」
本会議では、中谷委員長が委員会の決定について報告した。青木議員は退席を求められ、議員には委員会が決定した陳謝文が配布された。委員長は、再審査に至った経緯について「地裁の決定を受け、尊重すべき点があれば尊重し、適切に対応する必要があると判断した」と説明した。その上で、委員からの提案を受け、陳謝文朗読への懲罰の変更を賛成多数で決定したと述べた。
討論では、懲罰に反対の議員からは「議員は住民の代表として地方公共団体の意思決定に反映させる責務を負っており、委員会での発言が不当に制約されてはならない」などの意見があった。賛成の議員は、地裁の決定を司法による地方自治への介入と批判、「懲罰としての感銘力が失われることは問題であり、再度、陳謝の機会を与えるもの」などと主張した。
陳謝文「内容納得いかない」
採決は議長と青木議員を除く14人で行われ、賛成は10、反対は4だった。青木議員は議場の演壇で陳謝文を渡され、朗読を求められたが、文章に目を通した後、「内容に納得がいかない」と述べて朗読を拒否した。
朗読拒否に対しては、8議員が連名で新たに懲罰動議を提出した。
定例会終了後、青木議員は奈良市の奈良弁護士会で代理人弁護士と共に会見し、「出席停止から陳謝になったことは大きな勝利。出席停止とならず議会で発言できたことはうれしかった」などと感想を述べた。
また、同僚議員が再現した陳謝文も明らかにした。それによると、「私の身勝手な判断で(陳謝文を)朗読しませんでした。心から反省しています」などという内容だった。陳謝文は青木議員が朗読を拒否したため、その後、すぐに回収されている。懲罰特別委は、青木議員が陳謝文の朗読を4回続けて拒否した後、出席停止処分を決定していた。
再び懲罰繰り返される可能性
仮の差し止めに対しては、議会が9月8日付で即時抗告しており、大阪高裁での手続きが続いているが、青木議員の弁護士は「懲罰が陳謝に確定し、差し止めの対象がなくなった以上、高裁の手続きは遠からず終結することになる」との見方を示した。一方で、新たに懲罰動議が提出され、再び陳謝文朗読の懲罰が繰り返される可能性があることに懸念を示した。
この間の議会運営を巡って、筒井寛議員(ejoy香芝)ら4議員は9月26日付で、川田裕議長に対し要望書を提出している。仮差し止めの決定があったことや9月5日に予定していた懲罰の議決が見送られた理由について、何の報告や説明もないと指摘。
また、川田議長が即時抗告をしたことも報道で知ったと述べ、議会や全員協議会での報告、議論もなく、懲罰特別委での話し合いも持たれなかったことに「強く抗議する」とし、定例会最終日にこれらについて説明を求めると要望した。
同議員らが受け取った回答によると、川田議長は仮差し止め決定について「大阪高裁や奈良地裁に係属中であることから安易に相手方当時者に情報を提供することは避けるべき」などとし、また、即時抗告については「法令に従って適切に対応している」と反論している。
筒井議員によると、定例会最終日に地裁の仮差し止め決定の文書の写しが配布されたという。
地裁は仮の差し止めの決定で「陳謝拒否をもって議員活動に対する制約の大きい出席停止の処分を科すのは、裁量権の範囲を超え、またはその乱用と認められる」との判断を示している。 続報へ