陳謝処分の仮差し止めも申し立て 奈良県香芝市議、懲罰繰り返し巡り地裁に
会見に臨む青木恒子香芝市議会議員(中央)=2022年11月10日、奈良市の奈良弁護士会
奈良県香芝市議会で、国民健康保険料や生活保護の窓口への同行を巡る発言が議長に対する侮辱に当たるなどとされて、青木恒子議員(共産党)への懲罰動議が繰り返されている問題で、青木議員は奈良地裁に対し、議会が出席停止だけでなく陳謝の処分も行わないよう仮の差し止めを求める申し立て書を提出した。
青木議員と代理人の弁護団が10日、奈良市の奈良弁護士会で会見を開き明らかにした。提出は11月7日付。
青木議員は、昨年12月の市議会福祉教育委員会での川田裕議長に対する発言が侮辱に当たるなどとして、議場での陳謝文朗読の懲罰を科されたが、議会が決めた陳謝文の内容に納得がいかず、4度にわたる懲罰でいずれも陳謝文朗読を拒否。市議会懲罰特別委員会は今年8月18日、出席停止8日間の処分を決定し、本会議への提案を予定した。
一方、地裁は青木議員の今年8月24日付の申し立てに対し、「裁量権の範囲を超える」などとして9月1日付で出席停止処分の仮の差し止めを決定。これを受け、懲罰特別委員会は処分内容を再審査。出席停止処分より軽い陳謝文朗読に変更して同月29日、本会議に提案、可決された。しかし、青木議員はこれについても拒否、同日、再び懲罰動議が提出された。
同動議を審査し、懲罰の可否や処分の内容を決める懲罰特別委員会は11月10日時点でまだ開かれていないが、次の12月定例会またはそれまでの臨時議会に委員会での決定内容が提案され、陳謝または出席停止の処分が議決されるものと、弁護団はみている。
弁護団によると、9月1日付の地裁の出席停止処分差し止めの効力は、新たな懲罰動議には及ばないという。このため、懲罰に賛成してきた議会の多数派が地裁決定の意を酌まず、再び陳謝文朗読を議決し、青木議員が拒否した場合、あらためて出席停止処分を議決することも可能という。
陳謝処分の差し止めは司法において前例がないという。それでも、申し立ての対象に加えたのは、出席停止処分の差し止めが決定されても、今回のような展開が繰り返されることが予想されるためという。
弁護団の古川雅朗弁護士は会見で「懲罰が議会の秩序維持という目的から外れて、多数派議員から少数派議員の活動に対する圧力のように用いられることがあるとすれば、裁判所が介入すべきと考える」と語った。
川田議長は取材に対し、議会事務局を通じて「申し立ての内容を見ていないのでコメントは差し控える」との談話を出した。 関連記事へ