奈良県水道一体化への参加、26市町村すべての議会が承認
県域水道一体化の主要水源となる大滝ダム=2023年4月、奈良県川上村
奈良県域水道一体化を協議する県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事)を構成する26市町村のすべての議会のこの9月定例会で、一体化への参加が承認されたことが「奈良の声」の調べで分かった。一体化参加への最終意思となるもので、10月7日に予定されている県議会での採決で可決されれば、2025年4月、県と26市町村の水道統合による事業が開始される。
採決 結果 |
賛否の状況 | 定数 | |
---|---|---|---|
奈良市 | 市長の判断で不参加 | ||
大和高田市 | 可決 | 賛成多数(反対3) | 17 |
大和郡山市 | 可決 | 賛成多数(反対5) | 20(欠員1) |
天理市 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 16 |
橿原市 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 23(欠員1) |
桜井市 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 16 |
五條市 | 可決 | 賛成多数(反対2) | 12 |
御所市 | 可決 | 全会一致 | 13(欠員1) |
生駒市 | 可決 | 賛成多数(反対3) | 22 |
香芝市 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 16 |
葛城市 | 市長の判断で不参加 | ||
宇陀市 | 可決 | 全会一致 | 12 |
平群町 | 可決 | 全会一致 | 12 |
三郷町 | 可決 | 全会一致 | 12(欠員1) |
斑鳩町 | 可決 | 全会一致 | 13(欠員1) |
安堵町 | 可決 | 全会一致 | 9 |
川西町 | 可決 | 全会一致 | 12 |
三宅町 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 9 |
田原本町 | 可決 | 全会一致 | 14(欠員1) |
高取町 | 可決 | 賛成多数(反対1) | 8 |
明日香村 | 可決 | 全会一致 | 9 |
上牧町 | 可決 | 全会一致 | 12 |
王寺町 | 可決 | 賛成多数(反対2) | 12 |
広陵町 | 可決 | 賛成多数(反対2) | 14 |
河合町 | 可決 | 賛成多数(反対3) | 12 |
吉野町 | 可決 | 全会一致 | 9 |
大淀町 | 可決 | 賛成多数(反対2) | 12(欠員1) |
下市町 | 可決 | 全会一致 | 8 |
各市町村長が議会に提出した議案は、一体化の受け皿となる県広域水道企業団(一部事務組合、特別地方公共団体)を今年11月に設立するために、水道事業を共同で事務処理する企業団規約について議決を得るもの。「奈良の声」は各市町村議会事務局に電話で採決結果を確認した。
県が県内28市町村に参加を呼び掛けた一体化構想。うち市長判断で不参加を決めた奈良市、葛城市を除く26市町村で議案が提出された。このうち、12市町村議会では採決の結果が全会一致だった。水道会計の累積赤字や過疎化による給水人口の著しい減少など、厳しい経営環境にある自治体ほど、反対意見が出にくい傾向が現れた。
荒井正吾前知事がリーダーシップを発揮し、一体化計画を進めた。大和郡山市など経営が良い団体に対しては、企業団に引き継ぐ資産の大きさに応じて水道施設の耐震化を優遇する策も講じた。
料金格差が著しい構成団体が集まっており、事業開始の初年度から廉価の統一料金を図る。山下知事は昨年7月、前知事が進めた方向に対し「財政の試算に疑問がある」などと厳しく批判し、見直しも辞さないと発言したが、わずか2カ月半で撤回した。
近年、全国でも類を見ない大型統合で、奈良盆地の水道水源地図が塗り変わる。地下水や県営ダムを水源とする大和川流域の6浄水場が廃止され、代わって水系の異なる吉野川の大滝ダム(国土交通省)からの長距離導水が加速する。
県中部はかつて地下水の市町村営浄水場が各地で稼働していた。近年は県の指導により浄水場の廃止が進み、県営水道(大滝ダム、室生ダム)からの受水100%に踏み切る市町村が相次ぎ、一体化の土台になった。