奈良県水道一体化 企業団規約案を承認 市町村9月議会に提案
奈良県広域水道企業団設立に向け、規約案を承認した準備協議会=2024年7月29日、奈良市内
奈良県域水道一体化を協議する県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事)の第5回会議が7月29日、奈良市内で開かれ、構成組織を県・26市町村と定めた企業団規約案を異議なく承認した。構成団体すべての9月議会で企業団設立議案の議決が得られると11月、一部事務組合の企業団(特別地方公共団体)が設立され、来年2025年4月、統一料金による事業が開始される。
改正・水道法が奨励する時限措置の国庫補助金(211億円、10年間)を満額受給することを優先課題として協議が進められ、これに加え県支援金(211億円)の支出を荒井正吾前知事が約束。これらを原資に地震に弱い石綿水道管などの撤去、施設の強靱(きょうじん)化にも弾みがつくとされている。
主水源は貯水量にかなりのゆとりがある国の大滝ダム(立ち退き500世帯、吉野川)。統合の財政効果を生み出すため、県民に身近な大和川水系の県営ダムを水源とする天理市、桜井市の浄水場、地下水をくみ出す大和郡山市の浄水場などが廃止になる。
「民営化しない」と山下知事
料金の統一は水道広域化の実務の中でも最も困難が伴うといわれ、大阪府の府域一水道構想でも「数十年後」(東大阪市議会の理事者側答弁)という。それだけに料金統一の実現は、水道事業を民間企業に譲渡しやすい形態との見方もある。
奈良県が統合当初からの料金統一を決めてわずか4年。それまでは統合後10年以内に料金を統一する方針で、経営が苦しく水道料金が高い団体は10年程度は現状を維持することで収益増につながる一面もあった。
規約案には広域水道企業団がコンセッション方式への移行を行わず、民営化を行わない条文が盛り込まれた。一体化構想を進めた荒井前知事の方針を踏襲した形だ。
一方、山下知事は維新公認で昨春の知事選に初当選。大阪市では、維新を旗揚げした橋下徹氏、現・維新共同代表の吉村洋文氏が市長時代、水道民営化議案を上程(否決・廃案)している。
協議会終了後のぶら下がり会見で山下知事は「民営化を希望する構成団体(市町村)はなかったし、私自身も民営化するつもりはもともとない。例えば『将来、そうなるんじゃないか』という質問が9月議会で出る場合も想定し、規約にちゃんと書いていると、各首長が説明することで、民営化の心配がないなら賛成が得られるだろうと、条項が入れられたと認識している」と話した。
企業団規約の条文を改正するためには、すべての構成団体(県・26市町村)の議会で議決が必要となる。